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::黄昏の迎え



「また‥此処にいた」

 安堵したような声に視線をあげると、制服姿のままの姉の姿があった。足許はサンダルをつっかけてアンバランスだ。

「ね、帰ろ?」

夕日を背に手を差し延べる姉は柔らかく笑んで、あたかもその光が結晶と化して人の形を為しているかのようだった。
 まだ水っぽい瞳をしばたたかせ、こぼれた滴を拭うと、差し出された手をとった。

 変わらない、柔らかく温かい手。

 きっと、もうあと数年もしたら、この手を小さく思う時が来るのだろう。その時が来てもこの手はやはり温かいままだろうか。

 この手に優しく守られていた小さな自分を慈しむ時が、来るだろうか。



【harbour】避難所/隠れ場
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