企画跡地

□No title,

 
「引っ越ししてくるかもまだわからないのに紹介しちゃうの?」

「うーん、でもほら、おみくじには出てるわけだし」

「ああ、なる程。おみくじに出すことで退路を断ったわけなのか」

「新年早々見切り発車なのね」

「そんなだから手が回らなくなるんだろう。成長しないなあ」

「うぅ……」

「どうしてすみれさんが落ち込むんです?」

「どうしてだかわからないけど、胸が痛むの……」

「それは気のせいだ。すみれが気にすることじゃあない」

「気にしなきゃいけない人は別にいますしね」

「2人とも辛辣……」

「そんなことないぞ。なあ?」

「はい、もちろんです」

「……えっと。まあ、そんなわけで、退路を断とうキャンペーンの一環ってことになるのかしらね、これも」

「そういうことですね」


「そういうことだな」

「あはは……」

「あの……」
 
「お客さま連れてきました」

「あらら、マキちゃんありがとう」

「ご苦労様でした」

「えへへ」

「むむ、こちらがだべってる間に仕事をこなすとは、できる子どもだな」

 
「眼鏡忘れた……」

「なんだ、珍しい取り合わせだな」

「うーんとね、ここだけの話なんだけどね、お兄ちゃんを描くのをうっかり忘れてたんだって。だからマキひとりになっちゃうから心配してくれた聖くんがついて来てくれたの」

「聖さん、大丈夫ですか?」

「うん、見えなくてもなんとかなると思うんだよね。話すだけだし」

「そっち、壁です」


「……お前ひとりでも充分やれると思うんだが」

「聖くんが一緒で、すごく心強かったよ」

「ああ……うん、それならいい」
(なでなで)

「?」
 
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