蝶よ華よ!

□第一話
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4月、晴れて高校生となった俺は拳を握りしめた。
あの兄貴たちのせいで、中学は散々だった。具体的に言えば兄弟というだけで変な連中の一人とされ、遠巻きに眺められる寂しい中学時代を過ごしたのだ。高校では落ち着いた学園生活を送りたいと、切に願っている。

『新入生、着席』

入学式も中盤、壇上で生徒指導の先生が何やら話しているが、今はそれどころじゃない。こういうのは最初が肝心だ、ぼっち生活にならない為には自分から動かないと!
隣の人を横目で見るとヒマそうにしていた。

「あ、あの…俺、ひいらぎゅッ」

しまった、噛みまくった!ぼんやりと壇上を見ていた茶髪君はピクリと反応し、こちらを見つめた。

「ん、なに?」

なんてこった。人懐っこい笑顔が眩しいその茶髪君は、えらくイケメンだった。

「ご、ごめん。俺、柊。柊華也」
「…外部生?」

突然聞かれ、何でいきなり?と驚いた。
小中高とエスカレーター式であるこの学校に親の都合で編入してきた俺はおそらく、外部生ってやつなんだろう。

「そうだけど、何で?」
「俺に普通に話しかけてくるから」

普通って…俺としてはかなりの一大決心で声かけたんだけど、そういうことじゃないよな。
なら、内部生でしか分からない何かがあったのか?もしや…

「ちゅ、中学でイジメられてたとか?それは辛かったろうな…でも俺は気にしないぜ!」
「ぶはっ」

こっちは真剣に言ったのに吹き出しやがる、失礼な奴だ。

「くく、俺イジメられるように見える?」
「いや、全く」
「はー、外部生って新鮮だよな。あ、俺は長谷川祐太ね」

なぜか気に入ってくれたらしい長谷川くんは握手を求めてくるが、それより気になることが…

「えーと。長谷川くん、分かるように言ってくんない?」
「祐太でいいよ。んー、なんていうかさ…俺に寄って来んのって友達になりたい奴じゃない『付き合って』系ばっかなんだよね」
「…ココ男子校だよな?」
「男子校だからこそっていうか…顔のイイ奴らに人気が出ちゃうんだよね、俺みたいな」
「おっとぉ?」

おやまあ随分とあけすけですね!
確かにカッコイイよ美形だよイケメンだよ、でも男に言い寄られたって嬉しくないもんねッ

「目立ちたくない奴らは俺を避けるし」
「へえ…大変だな俺には想像もつかねぇよ」
「華也も悪くないよ、そのー…素朴で」
「ヘタな慰めすんな!」
「あ、あと忠告。生徒会には関わらないこと」

生徒会?いや、普通に関わることなんてないんじゃないの。
そう顔に出ちゃってたのか、祐太はにこっと笑った。

「ま、めったに関わることはないよ、一般生徒は生徒会室にも近付けないし、寮も俺らとは違う特別階だから」
「ふうん」
「うわ、興味ナシですね」

だってどうでもいいし、仕方ないじゃん。それより食堂のメニューの方が気になるわ。

「そういや、華也この後ヒマ?」
「え、何で」
「今日は入学式で終わりだしさ、外に昼飯食べに行こうよ。」
「行く行く!あ、俺欲しいモンあるんだよな」
「じゃ、買い物もかねて」
「おう!」

答えながら、そういえば兄貴たちが居ないと思って辺りを見回す。あー、でも入学式なんてアイツら出るわけないよな…どうせサボってどっかに行ってるに違いない。
ま、居なくて良かった。


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