Treasure

□やんや様より相互記念
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スキ、不覚にも



『おいナミ、いい加減にしやがれ』

マリモの低い、それはド低い声が愛しいナミさんへと向けられる

おいこらマリモ!てめーナミさんに何て口ききやがるんだと彼女を庇うのが俺の役目のはずなのに

『えーだってえー』

『だってじゃねー、もう我慢の限界だ』

元より怖い顔を更に悪人面に近付けて、ギロリと睨む奴をめっ!って叱り付けてやらないと駄目なのに


甘い香りに、柔らかい感触に、頭はぽやぽやうまく働かない


『んー…もうちょっとこのまま…』

そうだナミさんの言う通りだ、俺だってもうちょっとこうしていたいでけー声で邪魔すんじゃねーよクソマリモ

ぽやぽやうとうと、何かすげー気持ちいい

うっすらと開いている瞳に青筋を浮かばせたマリモさえいなければ最高だ

こいつなんて放っておいて、このまま瞳を閉じてしまおう、そう思ったのに

『だーっ!いい加減にしろ!!!さっさとコックを返しやがれ!!』

マリモの叫び声、その瞬間ぐんと身体が揺れ今まで夢うつつだった意識が突如現実に引き戻される

『うわわわっ、何だっ?』


パッチリと目覚めた俺は何故かマリモの腕の中

向かいには『あ〜…』と可愛い声を上げるナミさんの姿


『せっかくサンジ君お昼寝してたのに起きちゃったじゃない』

『うるせーっ、いつまでもベタベタ触りやがって!』


『だってサンジ君が一人でお昼寝なんて珍しいんだもん、いつも忙しそうにしてるし夜はゾロが独り占めしちゃうから』

『当たり前だ、昼も夜もこいつぁ俺のもんだ』

これでもかという程のドヤ顔を披露してぎゅっと俺を抱きしめるもんだから、俺の身体もか〜っと熱くなってしまうわけでして

 
『ななな何言ってんだてめー!人が気持ち良く寝てんの邪魔しやがって、放しやがれ!』

その分厚い胸板を押しながら怒鳴る俺に続けるナミさん

『そうよー、せっかくサンジ君に膝枕して楽しかったのにー』

『そうだ!せっかくナミさんが膝枕を…て、え…え?』


突然の爆弾発言に状況が掴めない、ナミさんが誰に?何をしていたって??

訳が分からず目の前の悪魔と美しすぎる天使にきょろきょろと目をやってみるが、説明はなかった上に悪魔の怒りはおさまらない

『やかましい!人のコックの寝込み襲って頭撫でたり頬擦りまでしやがって…っ!俺ですらしたことないんだぞ!』

『なによー!ゾロはそれ以上のことしてるじゃなーい!』


わーわーと言い争う二人

段々と内容がえげつなくなっていってることさえ気付けない程、俺の思考回路はショート寸前

『おい…マリモンモン』

『あ!?』

『じゃあ、何か?今まで俺は居眠りこきながらナミさんに膝枕されて頭撫でられて頬擦りまでされてたのか…』

『おう、安心しろ今後二度とこんな目にはっ』


言葉を詰まらせた奴がそれ以上を口にすることはなかった、否、出来なかった

『テメーよくも邪魔したなーっ!!!』

大きすぎる破壊音、メリーの時のトラウマでウソップは船の一大事に肩を震わせただろう

メリっと壁に減り込んだ奴を余所にナミさんにもっかいもっかい!と尻尾を振ったが、これ以上怒られても嫌だから、と笑って俺に背を向けてしまった

(きーっあんのマリモヤロー!!)






 


その日の夜、夕飯時は誰が見ても機嫌最悪だったゾロがいまだにむっすりと唇を尖んがらがせて夕飯の後片付け、朝食の準備をこなす俺を睨みつけていた

二人きりの空間、じとーっと恨みを込められた視線に俺は冷や汗をタラタラ流し耐えていたが元々気の長い方ではない俺の我慢の限界はすぐにやってきた


『だああ!何なんだよさっきから!』

朝食の支度をしていた俺は包丁と大根をぶんぶん振り回しながら奴を睨みつける

確かに少しやりすぎたかなーとは思ったよでも自業自得でもあるわけで余計なことをペラペラとくっちゃべったお前にも責任はあるじゃねーか、しかもナミさんがせっかく俺にお触りしていたのを邪魔しただあ?許せるわけねーよ!

よくもまあ噛まずに喋れたもんだと自分でも感心してしまうくらいに口を挟む間もない勢いで怒鳴り散らした


『テメーは俺にだけお触りされてりゃいいんだよ!』

『やかましいっ!!』

『テメーは俺だけのもんだ誰にもやらねえ!』

『あーもううっせぇうっせぇ!』

なーっにをクソ恥ずかしいことをあっさりと!

ムカつくのにそれでもいちいち反応して熱くなる身体をほんとどうにかしてほしいと思いながら赤くなってそうな顔を見せてなるものかと急いで背を向ける


『おい』

『……』

『おいコック』

『うっせ黙れ』


トントントン、料理に集中してるフリをしてるけど心臓バクバク

必要以上に大根を切って動揺してる自分が余計恥ずかしくてぎゅっと唇を噛み締める


 
『コック』

ゾロの低い声がキッチンに響いた

そんな優しい声を出すなんて卑怯だ、まるで好きだと言われているように感じてしまう

『…んだよ』

『こっち来い』


こいつ本当自己中な、今俺が忙しいのが分かんないかね

心の中では憎まれ口が完成しているのにそれが言葉となってこの世界に生まれることはなく、不思議なことに奴の言うことをきいてふらふらとゾロのもとへ向かう身体の理由はグランドライン現象だとしか思えない

決してほだされたわけじゃないんだからな!


奴の目の前まで行くと満足そうににかっと笑う

『てめ、やめろその顔』

ドキッとするから、なんて絶対絶対言ってやるもんか

『顔真っ赤』

『うっせ飯抜きにすんぞ』

『可愛い奴』

目の前で嬉しそうに笑って、そんな馬鹿野郎なことをほざきやがるから言い返してやろうとしたのにすんげー馬鹿力で腕引かれて、気付いた時にゃあ筋肉マリモの腕の中

『だあっ!何しやがるんだ!!』
ぎゅむぎゅむと抱きしめられて、じたばたしても解けやしねえ

ナミさんのような甘い香りも柔らかい身体も持ち合わせていない

力強ぇーし、ちょっと痛ぇーし、ムキムキだし、カチカチだし

何一つとしていいことなんてないのに

『ははっ!やっぱてめーはここが一番似合うな』

『嬉しくねーよくそ!』


ムカつくから認めてやんね
調子乗るから教えてやんね


(ここが一番、落ち着くなんて)

ここが一番、スキだなんて


END

(ん?これは…)

(お、悪い勃った、頼む)

(前言撤回!!!てっかーーい!!!)



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