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□バレンタイン
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今日はバレンタインだ。
…だから今日は死ぬ。
いや、もう慣れたが…毎年あのメス猫共の大群は恐ろしいものだ。俺様は元々モテるが、氷帝学園テニス部レギュラーは人気が高いからな。基本的にアイツらも結構な数貰ってんじゃねぇか?
まぁ、俺様は毎年それなりに貰ってんだがな。去年は一昨年よりも少なかったか?確かトラック3台から2台半になってたか…対して差はねぇがな!ハッ!
アーン?ちゃんと貰った分全部を食べてるのか?だ?馬鹿言え、食えるか。っつーか本当にアイツらはこの俺様を太らせたいのかってんだ。あんな食ったら鼻血で貧血どころの話じゃねぇ!糖尿病で病院送りだぜ…誰かさんの受け売りじゃねぇがそんな『激ダサ』なヘマはしねぇぜ?
たまーにチョコレートじゃないのがあってそれは食べる。口の中の気分を変えられるからな。
あとは…そうだな、去年だったか男子共が花束を持ってきたな…あれは部室に飾っておいた。なんだか忍足が血相変えてなんか叫んでたが…アイツは何が言いたかったんだかな?それは俺の役目やー!とか言ってたが、別に誰が渡しに来ようと関係ねぇだろ。あーあれだろ?日頃の感謝の気持ちを込めて的なやつでアイツらは持ってきてんだろ?いい心がけだぜ。
……アーン?なんだよ。
俺様は男女関係なく平等に対応すんだよ。別にアイツらだって深い意味はねぇだろ。
が、ある女子は特別だ。
……最近、気になっているやつがいる。ま…まぁ?そりゃあ学園内のアイドル(?)であるこの俺様だって恋愛の自由はある訳で、んでもって好きな…と言うか気になる奴はいる訳で……
中学一年の頃からある生徒が気になっていてそれが実は一目惚れだと気付いたのは二年の終わりの頃だった。
何気そいつも俺様にチョコレートを出していたらしくその名前を見かけた事がある。もちろん食べた。当たり前だろ。
…が、悲しいことに他の奴等は手作りだったりするのに関わらず…アイツは買いチョコだった。
いや、それなりに旨いチョコレートを選んでくるから文句はねぇが、なんか…こう…。まだ二回しか貰ってねぇからなんとも言えねぇが手作りチョコにしてくれたっていいんじゃねぇかと思う。…もしかして料理が苦手なのか?
なんだかんだで嵐は去り、部活の時間まで耐えた。嵐の第一関門である昼休みは乗り切った!あと残るは部活後の放課後…まだアイツから貰ってねぇ…!そうアイツ…龍門寺麗奈からだ!
まさか今年はくれないのか?
くそっ!さっさと告白して繋ぎ止めておけば…って!自覚したのはほぼ3年の時じゃねぇか!無理だったな!っつーか!もう告白しねぇと卒業じゃねぇか!…いや龍門寺が高校も氷帝なのは調べ済みだったな。焦るな俺……
いや、だからと言ってのんびりはしてられねぇっ!!
…けどチョコ来ねぇのはなぁ〜
珍しくぼんやりと過ごす部活開始前の自由時間。他の奴等はいつも通り騒いでいた。誰が何個多く貰ったか、だと?いちいち数えてらんねぇよ。そう答えればブーイングが帰ってきた。
そして何故か龍門寺の話になっていた。しかもまさかまさかの宍戸の従妹だった!嘘だぁ!似てねぇよ!!ありえねぇ…!嘘だ!しかもなんかムカつく…あの宍戸の従妹だなんて…龍門寺が可哀想だ!…名字は違うんだな。ってことは宍戸の親の妹さんか姉の娘か……
……待てよ?下手したら親戚になるのか!?
……い……嫌だ。地味に嫌だ。
向「あー龍門寺?可愛いって評判いいよな〜意外。」
なんだって!?
つーか意外ってなんだ!笑ってんじゃねぇよっ!!
可愛いに決まってんだろ!
芥「宍戸に似てないよね〜」
宍「…うるせえ!悪かったな」
向「そういや料理上手かったよな?今年はチョコ作んねぇの?」
宍「あー…なんかもう作らねぇってさ」
芥「なんで!?」
忍「……なん?龍門寺さんて料理上手なんか?」
向「うっめえよっ!!」
忍「そういえば龍門寺さんと一緒のクラスになった男子がチョコ求めてたなぁ…別に深い意味は無さげやったけど」
鳳「龍門寺さんって…あの料理上手の?」
な…!?
そんな噂があったのか!?
一応驚きを隠しながら話を聞く。と、言ってもコイツらからしたら俺様は暇潰し程度に聞いている。とでも思うのだろうか?
いや、内心滅茶苦茶必死に聞いてるからな?
宍「あー実はオレがその話を広めたんだよなー」
向「えー?あの龍門寺が料理上手で旨いって話?」
鳳「そうです!それです」
宍「おー。一昨年ぐらいに義理でいいからチョコくれよって頼んだのがきっかけだったなー…ほら料理が旨いの知ってたからさ」
「へぇ…そんなに旨いん?」
向「あぁ!そりゃ親が料理人で、将来の夢が調理師でそれに見合う技術があんだからうめぇよ」
「へぇえ〜…」
「(……俺様も龍門寺からチョコをもらってるからな!)」
買いチョコだけど。
手作り欲しいな…
宍「ただもうそれ以来チョコの手作りがなくなってなぁ…」
なんだって!?
向「それだよ!謎!なんで?」
芥「そういえば中学入ってから貰ってないなぁー」
「(……そういや中一の頃、最初っからだよな…買いチョコ…だからこそ毎年目立ってたな…)」
宍「それが俺にもわっかんねぇんだよー」
鳳「…本命さんがいるとか?」
3人「…やっぱそれだよなー」
うーん…と唸り始めた3人。
と、その数秒後。俺様は物凄く驚かされる羽目になった。
『ねぇー!宍戸いるー?』
宍「うぉぉっ!!驚かすな!」
『なにそのリアクション。』
芥「麗奈ー!お久しぶりー!」
『あー?そういえば会うの久々だね〜』
向「なぁ〜今年も買いチョコ?」
『はぁ!?なんであげなきゃいけないのっ!!』
向「えっ!?くれる以前の問題!?チョコを貰う選択すら!?」
『めんどくさい。』
向「えー!?」
コイツら…知らなかった……
まさかこんなに龍門寺と仲良かっただなんて…龍門寺に夢中になりすぎて気付かなかったぜ……
『けど、今年は作ったよ』
「「「マジ!?」」」
『ちょっと頑張っちゃった』
えへへと笑う龍門寺は天使だ。今年は手作りだと?……俺様にも作ってたりするんだろうか…
と半ば意識を飛ばしつつ目の前で繰り広げられる会話を聞きつつ今の状況を眺めていた俺様の元へ龍門寺が来た。他の奴等が驚く。俺様も驚く。いやいやいや!俺様の方がびっくりだっつの!まさか今渡される感じか!?
『…今年は手作りにしたけど噂じゃ手作りなんか食べてないって聞いて…だから今まで買いチョコだったの…でもよりによりをかけて作りました!良かったら食べて?』
跡「……な…」
宍「えっ!?今まで貰ってたのかよ!?」
向「マジかー!」
跡「……ふ…手作りになる日を待ってたぜ?」
『え……』
跡「ありがたく頂く。…ホワイトデーを楽しみに待ってろよ?」
『――っ!!?///』
もちろんお返しはこの俺様さ。
HappyValentine...
H24.2.14end