Short

□悲しみの中出逢えた奇跡
1ページ/1ページ





もう………ダメかもしれない…
なにもかも…
ハッ………やってらんないよ…
信じられるものがない。
友人も、親友だってちゃんといる。家族とだって悪い仲じゃない。むしろ絵に描いたような微笑ましい家族……だと思う…。
もしかしたら全部私がそう思ってるだけなのかもしれない。
人間どう生きたって受け入れられないことが必ずあるし、嫌なことだってある。でも…
高校に行ってから変わった気がする。私の気持ち的なものが。
友人はいるけど、上手くいかない気がする、彼氏だって欲しい年頃だけど生まれて16年間、彼氏はいない。私の考えすぎなんだけど、そのうち友人とは私だけうわべの付き合いになりそうで…
友人が彼氏出来たって話を聞くと心底羨ましい。そう…私が感じているものは……
疎外感や孤独感。最近イライラしたり急に寂しくなったり悲しくなったりするのは私の気持ちの持ちよう……私は……
寂しいだけなんだ…
普通に楽しそうに過ごしているみんなが羨ましい……
そりゃ、嫌なことだってあるだろうけどまだ楽しく生きよう!って思って生きていけるだけいいと思う。もう…作り笑いは疲れた…
本当の私ってナニ?
いきなりキャラが変わったりしたら絶対引かれる。世の中案外そんなもんだ…
本当の自分がわからない…
夢だってあるから頑張って生きていきたい。自殺する気なんて毛頭ない。それが…それだけが唯一の救い。私は、生きる意味をなくしたらどうなっていたんだろう…
けど、私は死にたくない。やりたい事だってたくさんある。だから死ねない…。こんなこと誰にもいえない…………あぁ……
これだね…私が辛いのは……
話を…したいと思う人がいない…本人の愚痴も混ざっちゃうから
人間不満のない人はいない。
けどやっぱり耐えられない。
もう辛いよ…
…どうしたらいいの??
ある日の帰り道、私はいきなり体の左半分に来た衝撃に顔をしかめた。なにかと思い目を向けると…自転車ドミノ倒し……


………嘘でしょ??


ハァ……最近の私はとことん不幸体質だ……
特別目立つ容姿じゃないし、小さい子が倒した訳じゃない。高校生のやつが倒したんだから尚更誰も手伝ってはくれないんだろうな…

所詮顔か……
あるいは体?
ハッ……ふざけんな……
マジこんな風に産まれたことすら嫌になってきて逆恨みをしてしまう自分がイヤだ……
仕方ないことなのに。


あぁ……またマイナス思考な考えが頭を支配する……
頭を切り替えて早く、この倒れた自転車をどうにかしなくちゃ……ざっと見ても10台か20台近くはあるな……
ったく……なんで誰も手伝ってくれないんだよ……

世知辛い世の中だなぁー


ガシャンガシャンと音をたてながら一台一台丁寧に直していく。
その途中、やっぱり来た……
負な感情………もう、


嫌だ…………なんで誰も手伝ってくれないんだろう…


ホントに…私はそれだけの存在なんだって事を痛感する。
もし私がよぼよぼのお婆ちゃんだったら誰か手伝ってくれただろうか……


「…あの…大丈夫ですか?……手伝います…」





え?今……なんて……





「えっ!?ちょっ!だ…大丈夫ですか!?」

『……え?』





気が付いたら私は涙を流していた……





そこから数分足らずで自転車を直してくれた彼にお礼を言ってすぐさま立ち去る。

最悪だ。泣き顔を見られた上に突然涙流すとか絶対引かれた。なにこいつそんなに嬉しいのかよ、とか思われたかも…最悪。


私が立ち去ろうとした瞬間。
あろうことか彼は私の腕を掴み、突然走りだした。


『えっ!!ちょっと!!』


なに!?意味わかんない!いきなり!たぶん相手も高校生くらいだろうけどこれは軽く拉致に近いよ!?どこ連れてくのよ!





数分走り続けた先はコンビニが近くにある小さな公園だった。





『…あ…あのっ!』


私は乱れた呼吸を整えながら声を発した。
彼は全く呼吸が乱れていないんですけど……


「ごめんなさい。」

『え?』

「でも……本当に辛そうな顔をしていたからつい……何かあったんですか?いてもたってもいられなくて……早とちりならすいません……」
信じられない………
そりゃ確かに結構しぼんだ顔をしていたかも知れないけど、普通あの状況なら倒してしまったことに対して落ち込んでると思うハズ。それを……気付いてくれた?
初対面の上に、全くの赤の他人。見たところ、制服も違うから同じ生徒として…って事もない。
その瞬間、私の中で何かが弾けた……張り詰めていた何かが切れたかのように……





『―ッ!う……』

「えっ!!あっ!」





私は恥じらいもなく泣き出してしまった。溜まっていたものを吐き出すかのように。
例えこれが彼のたまたまの気まぐれなお節介だったとしても私は別に構わない。少なくとも少しは救われたのだから……





『……ッ……』

「もう……大丈夫ですよ……」


そう言って彼は私を優しく抱き締めてくれた……
彼はまるで悟りを開いた神父様のようだった。


『……私っ……』

「大丈夫です…何も言わなくていいです……」





こんな私の事を少しでもわかってくれる人がいてくれて私は救われた……





散々泣きまくった末に、落ち着いた私は彼にお礼と謝罪を述べた。




「大丈夫ですよ!人は誰しも辛い思いを抱えているものですから!!」

『…すごいね…。うん…本当にありがとう……』


私が言ったすごいねの意味が通じなかったのかハテナマークを浮かべた彼に微笑みを返して誤魔化した――…







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ