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□今年一番の猛暑。
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「っ……くそっ…」
暑い!!!こんなんじゃ部活に集中出来ねぇ!くっそ…今日は異常だな…いつもならこんな暑いくらいじゃなんともねぇはずなんだが……
辛いのは俺だけでなく、他の部員共もへたばっていた。……こりゃ重症だな…休憩にするか…
「おい!休憩にするぞ!各自しっかり休め!倒れんじゃねーぞ!」
俺が一声かけた途端に全員ラケットをその場に捨て去り部室へと走っていった。
喜びと言う名の奇声をあげて。
「なっ…おいてめぇらラケットを雑に扱うんじゃねぇっ!!」
遠くから仕方ないやろーとか気にすんなーだとか許してくださいーだなんて声が聞こえた。ったく…そんなに辛かったのなら言えっつうの。
呆れてふと視線を空に向けて俺も休むかと思いつつ校舎を眺めたその時、ある人物と目が合った。……あれは…麗奈?
「………図書室か…」
麗奈は目が合った瞬間、慌てた様子だったが、動くなと、そこに行くから待ってろと口パクで伝えれば理解したようで大人しくなった。
「滝!」
「ん?何?」
それから俺は滝に少しの間部員達を頼む。サボらねぇようよろしくなと。
「あー!ずりぃ!お前こそサボりー!」
「うるせーな。用事が出来たんだよ」
「なん?生徒会?」
「いや…違う」
「じゃあなんなんだ?」
「……図書室に、少しな」
「あー!オレマンガ読みたEー?」
「遊びに行くんじゃねぇよ」
「はいはい。行ってらっしゃい」
ったく…めんどくせぇな…と思いつつも俺はこの感じが嫌いじゃねぇ。そんな騒がしい部員達を置いて俺は図書室へと足を進めた。
「……よお」
「…あはは…どもー」
「珍しいな。放課後に図書室だなんて」
「……いや…えと…」
「……アーン?なんだよ」
何か言いたげだったが非常に言いづらそうな顔をしているのがわかる。
なんだよ?と先を促すと、ええと…と悩みだし、こう言った。
「…たまたま…ね?ここに来たら、校庭が見えて…で、跡部くんが見えたから…」
「………ずっと見てたのか?」
「…………まぁ…はい。」
「はぁ……ちゃんと近くで見ろよ」
「だってファンの子いっぱいだし…」
「お前ならもっと近くで見学させてやる」
「えー?いじめに遭うー」
「なんだそりゃ」
知らないのーー!?と言われた、別に知らないとは言ってねぇだろ。ただうっすらと知ってるだけで…確かに俺様達は人気があるせいで特別に仲がいいやつは目を付けられるのは常識だとは思っていた。だが…まさか麗奈が気にしているとは思わなかった。
「ずいぶん今さらなんだな」
「……確かにね…」
「龍門寺がそういうことを気にしているとは思わなかったぜ」
「………んー…なんかやっぱり改めて跡部くんのスゴさを実感したものでして…」
「はんっ!それこそ今更だな!」
「あははー」
「……おい。目、反らすな」
そういえば部活中だったのに来ちゃって良かったの?と、聞かれたが…愚問だな…俺様はお前がいたから来たわけで、しかも俺様がいなくたって問題はねぇんだよ。とは言えず、休憩にしたからな。とだけ告げた。
外の焼けるような日射しと蒸し暑さがこの場にないお陰か、それとも冷房のお陰か、ここは涼しい。まぁ大半の理由は後者だろうがなそして、何より落ち着く。確実に言えることはこの場が静かだから落ち着くのではなくて今まさにこの場に麗奈がいるから落ち着く。これも本人には言えねぇがな。
「今日は暑いねーテニス部も大変だぁ…」
「まぁな。だがそれくらいで弱音を吐かれちゃたまんねぇな」
「あはは、それもそうだね」
それから他愛もない話をしてからふと窓の外、テニスコートへと視線を移すと、休憩が終わったのか、それとも俺様が帰るまで遊ぶつもりなのか、どちらかはわからねぇが部員共は試合を始めようとしていた。
……俺様もそろそろ戻るか…
名残惜しいが致し方無い。
「……もう戻っちゃうの?」
「…仕方ねぇだろ。……ったく…そんな顔すんなよ」
「………あのね?今日せっかく暑いからプールに誘おうと思って…」
「……はぁ!?今からか!?」
「あ、もちろん学校のだよ?」
「………水着がねぇ」
「…足だけだよ」
「………そうか」
なんだか残念なようなそうでもないような…ともかく、この誘いには乗る。だって麗奈の誘いを断る理由が無いからな。それに俺様がいなくてもあいつらはどうにかなる。……多分。
「んじゃ、行くか」
「……!…本当に!?ヤッター!」
「……はっ…可愛いやつだな」
普通にそう思ったから素直に感想を述べて、つい頭を撫でた。その言動に驚いた麗奈は顔を真っ赤にしていた。
止めろよ!こっちが照れるだろ!!
「………不意討ちー…笑顔もかっこ良かったけど、セリフと動きがー…」
「龍門寺でも照れるんだな。貴重だったぞ」
「……………」
「…拗ねんなっての」
それから俺たちは屋内プールへと向かった。その間も他愛もない話だったかが一つ俺たちの仲を深める会話があった。
「……そういえばなんでお互い未だに名字呼びなんだろね」
「………そりゃ…」
付き合ってる訳じゃないから。とは言えなかったので、いじめに遭わないようにじゃねぇの?と答えた俺様だった。
「…別に名前で良くない?実際仲……いい…よね?」
「……俺に聞くな。」
「えー…」
「…まぁ、確かに特別ではあるな」
「!!!」
「だろ?……麗奈…」
「……光栄ですね。景吾くん」
「くん、いらねぇよ」
「………景吾…」
「………あのよ…」
「なに?」
もうすぐ屋内プールに着くという間際で俺様は麗奈の歩みを止めさせた。なにかって?んなもん決まってんだろ。俺たちの中途半端な関係を打ち破る台詞を今から言うんだよ。……だから、そんなに赤くなるなよ。こっちまでつられるだろ。アーン?
「………喜んで…よろしくお願いします」
「当たり前だろ」
「相変わらずだね」
「まぁな」
これから初デートと洒落込むとするか!夏らしく水遊びとはな。
何もなかった普通の日、それが突然大事な記念日に変わるとはお互い思ってもみなかったのだった。
2012.10.25