記念ss

□1万hitおよび最終回記念アンケss
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★7位 パラレル(ヴァンパイアとか)
「互いの告白、想いが繋ぐ未来」






ヴァンパイア族と、ライオネス族は互いの永劫の繁栄を得るため・・・若い次期跡継ぎ同士の婚姻を決めた。
それは本人たちの知らないところで決まったこと・・・そしてその二人は何も知らずに出会い、恋をする。
互いに一目ぼれだったことに何の疑問もないまま、同性でもある彼らは手を繋ぐだけの関係を保っていた。
まだそれ以上の欲望もないままの、親友とも呼べる存在でもある二人に突然の転機が訪れる。
それが、この物語の始まり。






「・・・オレは異形のモノ、俗に言うヴァンパイアってヤツだ・・・」

向かい合ったキョウヤの、見開いた瞳の青さが突き刺さるようなその視線が怖いと感じていた。
そんな中、オレは体の奥から絞り出すような震える声で告白をした。
知られたくなかった自分の・・・正体を今ここで自ら明かすことになったのは己が招いたことだったから。



キョウヤの怪我した指先から流れた赤い、その血を見た瞬間にオレの本能が危険信号を放った。
「こンくらいの傷、舐めときゃ治る」そう言ったキョウヤが一筋の血の流れを口に含む動作を知らず目で追っていた。
知らず渇いた喉、思わずごくりと生唾を飲み込んだ音が生々しく鼓膜に響く。
「ほらな?」その傷跡をあろうことか、キョウヤはオレの目の前に突き出したのだ。
唾液で濡れた指先にうっすらと滲む赤い血は、なけなしの最後の理性を奪うには十分魅力的な光景だったこと。
一度表に出た、その強い衝動を止められなかった・・・抑えることなど出来なかった。
ずっと直向に隠していた、オレの中に流れる古の種族の血が騒ぎだした瞬間だった。

「銀河?」

怪訝そうな声を出したキョウヤの顔すら今のオレにはちゃんと見えていない。
濁った瞳が視界を遮る中、無言でキョウヤの方へとさらに身体を近づける。
匂い、そう、キョウヤの流した血の匂いだけがオレの脳を刺激する中で怪我したほうの手を、そっと両手で包むように。
そんなオレの行動に、キョウヤはその腕を引こうとして力を込めたのが伝わった。
でも、オレは手を離しことなどせずに血の滲む人差し指へと顔を近づける。

「・・・−ッ?!」

キョウヤの息の飲む、小さな息遣いが耳を掠めた。
・・・慌てるような、そんな声を出すなんていつも余裕たっぷりのお前らしくないぜ?
ぴちゃり、突き出した舌でその指の血を拭うように這わせていくと唾液と血が混じった水音が聞こえる。
指先を口唇で挟むように覆い、血がまだ止まらない小さな傷跡に歯を立てた。

「痛ぅッ、・・・銀河!」

怒鳴るように強く名を呼んだその声にはっとして顔を上げた先に見えた、キョウヤの青。

「・・・あ、」

今、オレは一体何をしてたんだ?
何で、キョウヤはそんなに驚いた顔をしてるんだ?
霞みかかった、ぼうっとする曖昧な記憶と意識の中で目の前のキョウヤの顔を凝視する。

「  −ッ!」

鉄の錆びたような微かな匂いに、無意識下の中での自分のとった行動がフラッシュバックした。
口に残る・・・キョウヤの血、その味覚が口中をじわりと侵食してきた。
オレは強く握っていた、キョウヤの手首に気づいて力を緩めるとキョウヤはその手を引く。
濡れた指先と、オレの顔を戸惑ったような表情で見比べながら。

「キョ、ウヤ・・・オレ、・・・」

・・・オレは眉を顰めて奥歯をぎりりと鳴らして噛むと、キョウヤの視線に耐えられなくなり顔を逸らした。
それでも、ばくばくと煩いくらいに心臓の鼓動はその速さを増していった。
視界に映る地面を強く睨むように見つめて、オレは一度大きく息を吐く。
もう、何の誤魔化しも嘘も言うことが出来ないという覚悟を決めて拳を握った。

・・・そして、冒頭の告白へと戻る。






2012/4/29
続きます。
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