記念ss

□9000hit
1ページ/3ページ

9000hitありがとうございます。






「お前…な、んだその姿は …ッ?!」

「…何だって言われてもなぁ、起きたらこんなんなってた」

目が覚めたキョウヤが見た、銀河の姿。
それはどう見ても…推定年齢…幼稚園児並みの顔立ちと身長。
小さく縮んだ身体にだぼだぼの部屋着を纏わりつかせて。
絶句するキョウヤの様子に、銀河は小さな肩を竦ませた。

「あ、でも身体だけだぜ変になっちまったのは」

喋り方はいつもの銀河だったが、その声が高いことにキョウヤがさらに眉を顰めた。

「記憶もあるしなんら問題ないと思うけどな」

銀河はえへへと笑いながらすっぱりと言い切ったのだ。
キョウヤは銀河の…ある意味すばらしい順応性の高さに呆れるように溜め息を漏らした。

「…はぁ、何でテメェだけンな姿になっちまったんだ?」

キョウヤは昨日の行動を思い出そうと、額に手を当て目を瞑った。

「そういやそうだよなー?なんでオレだけなんだろ」

そのキョウヤの隣で首を傾げた銀河もうーんと唸って、昨日一日分の自分の行動を辿った。

朝はいつも通り、二人一緒に起きてここで朝食をとる。
その後、それぞれ別行動をしたのだ。
キョウヤは約束などしたわけでもなく、一人特訓すべく外へと。
銀河はWBBA本部長、父親である流星に呼ばれて出かけていった。
キョウヤも銀河も帰ってきたのは、夕焼けが暗闇に変わる間際の時間帯。

「オイ、銀河…昨日食べたものとか覚えてるか」

「ん、朝はキョウヤと一緒だろ?昼は父さんとヒカルと翼と遊とで近くの中華料理店で食べて…」

「その時とか何かヘンなモン、食ったり飲んだりしてねぇよな?」

そのキョウヤの言葉に銀河は食べたものを指折り確認しながら思い出しては、次々に言葉に乗せていく。

「まあ、普通の中華のメニューだな…あとは?」

「戻って、翼と遊とバトルしながらデータを取って…ああ、おやつにケーキ食べたっけ」

「もうねぇのか」

「あとはジュース飲んで…夕方ごろに帰ってきたんだよなぁ」

別段変なものを食べたり飲んだりしたわけでもなく、おかしい行動もなかったこと。
キョウヤも銀河も顔を合わせて、うーんとまた唸ってしまった。

「…わかった、とりあえず今日は一日ここから出るんじゃねぇぞ」

この姿の銀河を見られたら、はっきりいって騒動になるのは判りきったことだった。
とりあえず、キョウヤがそう言ったのは原因も何もわからない状態だし様子を見たいとの思惑もある。

「そうだよな…あ、でも倉庫の外でキョウヤとバトルするくらいならいいだろ」

銀河もキョウヤの意見には賛成だったが、一日室内にいるのは嫌だなと思ってこう聞いた。

「まぁ誰も来ねぇだろ、構わねぇぜ?…でもその姿のお前がオレに勝てるのかよ」

くく、喉奥で低い忍び笑いを零してキョウヤは自分より遥かに小さくなった銀河を見下ろした。

「あッバカにしたな!絶対負けねぇからな、キョウヤッ」

そう銀河は宣言し、ベッドの上に颯爽と立ち上がったのだが。

「あ、…服がない」

立ち上がり際、ずるりと落ちた下着とズボン。
上着だけでもかなり大きいので肩からずり落ちそうな状態だ。
今の銀河が着れる服など、ここに置いているはずがない。

「…ガキの服なんかねぇ、…そういやあの場所に…」

独り言のように、キョウヤは何か思い出して銀河にそこにいろと言い残して倉庫の外へと向かった。
その後姿を見つつ、銀河は残されたベッドの上に座り込んだ。

「…オレ、元に戻れるのかな…」

少し、いやかなり弱々しげな銀河の声。
一人になったこの空間はいつも見ているよりも、何だか大きくて静かで落ち着かない。
さっきはキョウヤに向かってかなり強がった態度でいた銀河。
でも、本当は不安で一杯だったのだ。
朝起きて、いつもと違う違和感の中で小さくなった己の手足を視界に納めたときの衝撃。
言葉がでなかった銀河は、少し放心した後に慌てて隣で眠るキョウヤを揺り起こしたのだ。

「…上だけならこのままでいいか」

どこに行ったのかも、いつ戻るのかもわからないキョウヤ。
小さくなったとしても、いつものように朝メシくらいは作れるだろうと踏んで銀河はベッドから飛び降りた。



「銀河、これなら着れンだろ…ん?」

裏口の扉を開けたキョウヤの鼻腔を擽ったいい匂い。

「キョウヤ、ちょうど朝メシできたぜ」

ぱたぱたと、いつもより軽い足音をさせて銀河が奥から出てきた。

「…そのカッコで作ってたのかよ」

「仕方ないじゃん、あ、その手に持ってるのは?」

銀河はキョウヤの手に、サイズの小さい服が握られていることに気づく。

「あっちの廃倉庫が以前リサイクル業者のものだったのを思い出してな」

首狩団がここ一帯の廃倉庫を占拠していた頃に、つるんでいた奴等がそこから色々持ち出してきたこと。
その時に衣服類も置いてあった事を喋っていたのをキョウヤは思い出したのだ。
行ってみると乱雑に散らかったままの一角に、不要な衣類が数箱分あったこと。
殆どが大きいサイズだったが、小さくなった銀河に合いそうなサイズのものを引きずり出してきたのだ。
ついでに子供用の靴も見つけてきたらしく、それも一緒に。

「下着はねえから我慢しろよな」

キョウヤは銀河にその服を手渡してやる。

「あ、ありがと!キョウヤッ」

「サイズは多少合わなくても、文句はナシだぜ」

うん、そう頷くと銀河はすぐに奥にそれを持って走っていった。
キョウヤはその小さな後姿を見て、「…手間掛けさせやがって」と呟いた。






2012/2/27
ま、まさかの続きものに…
続きはなるべく早くアップします…ッ

9000hit本当にありがとうございます。
来ていただける皆様のおかげです!

今回ちび銀河を書きたくなってこんな内容になりました。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ