記念ss
□44の日。
1ﾍﾟｰｼﾞ/1ﾍﾟｰｼﾞ
「へへ、まどかからおすそ分けもらってきちゃったー」
今日は、前もってペガシスのメンテナンスをお願いしていたまどかのいるB-pitに一人で行っていた銀河。
上機嫌で廃倉庫へと帰ってきた彼の手には、可愛らしい紙袋が握られている。
キョウヤはキョウヤで、一人特訓のため早朝から出かけていていて。
銀河より一足先に帰ってきて、ちょうどシャワーを終えたところに銀河が帰宅した。
「･･･行く度に何かしら手土産持たされるな、お前」
キョウヤは部屋着に着替えていて、まだ濡れている長い髪をタオルで拭っている真っ最中。
「今日はさ、どらやきとあんぱんだって」
「･･･甘味かよ、ったくまどかにしろお前にしろ･･･よく食うな」
「オレもまどかも甘いの大好きだからな！･･･何でも今日は『どらやきの日』と『あんぱんの日』なんだってことらしいけど」
どっちも今日だけの限定で桜あんの入った生どらと、桜あんぱんだってまどか言ってたぜと銀河ははしゃいだ声を出した。
銀河は鼻歌交じりに紙袋をローテーブルに置いて、もう一つの荷物を持って飲み物を取りに冷蔵庫へと向かう。
「そういや限定、って言葉にもお前ら弱いよなぁ」
がしがしと無造作に髪の水分を拭いながら、キョウヤはフンと鼻を鳴らしてそう呟いた。
そこに、奥のキッチンスペースから銀河がミネラルウォーターを２本手にして戻ってくる。
「限定ってのは限定だから欲しくなるんだって！手にしたときの喜びってのはホント格別なんだぜ？」
そう力説しながら銀河はキョウヤへと近寄り、手にした内の一本を手渡して。
キョウヤはとりあえず乾いた髪をそのままにして、タオルを首に回した。
「あー、そういうモンなのか？オレには理解できねぇよ」
きゅっと手首を捻って、受け取ったペットボトルのキャップを外すと冷えた中身を煽る様にキョウヤはゴクゴクと飲んだ。
キョウヤのそんな言葉に、銀河はふーんと首を傾げてローテーブルへと足を向ける。
「あとさ、まどかが夕メシの足しにって冷凍餃子も持たせてくれたから」
早速今夜食べような、にこにこしながらそうも銀河は言葉を付け加えてキョウヤの脇を通り過ぎようとしたその時に。
口からボトルの受け口を離し、手の甲で口唇を拭ったキョウヤが銀河に話しかける。
「記念日とか今日が何の日かってのは色々とあるが･･･肝心なのを忘れてるぜ、銀河」
飲みかけのミネラルウォーターを片手にしたまま、空いたもう片方の腕が銀河の行く手を遮るように伸ばされた。
「え？」
立ち止まった銀河に、キョウヤはにやりと口角を上げると徐に近づいてその腕を銀河の肩へと回す。
必然と身体を密着させられた銀河の鼻腔を掠めた、キョウヤから香ったいつもの石鹸の匂い。
「今日は４月４日、数字の４４･･･ししって読めるだろ」
そのままわざと耳元に顔を寄せて、キョウヤは銀河に囁くようにそう言葉を。
言葉とともに吐かれた息が擽ったかったのか、それともまだ縛っていないキョウヤの長い髪が首筋に触れたのが擽ったかったのか。
銀河はびくんと肩を竦める格好をして、一度目をぎゅっと瞑った。
「･･･は？･･･ししって･･･？･･･あ！獅子ってことか」
瞑った目を開けてぱちぱちさせながらキョウヤが言いたかった事、銀河はその答えを導き出すと手に持っていたペットボトルをぽんと叩いた。
「正解･･･まあ語呂合わせだけどよ、今日は獅子の日とも云うらしいぜ？」
「へぇ獅子の日かぁ･･･ってのはわかった･･･でもいい加減離してくれないとオレ、どらやき食べれないんだけど」
銀河はまどかにもらった生どらがさっきから食べたくて、自分にくっついたままのキョウヤに横目でキツイ視線を向ける。
自分の肩にかかる腕の重みを退かそうと、要は離れてもらおうと銀河が片手でその腕を掴んで力を込めた時。
手にした獲物を逃すものか、そう言わんばかりにキョウヤはぐいっと片手でさらに銀河の肩を抱き寄せた。
「フン、腹が減ってるならこの獅子を十分に･･･味わえよ？銀河」
あっちのどらやきとかあんぱんよりも、しっかりとな
そう言い切るや否や、キョウヤの台詞を聞いて目を見開いて口をぽかんと開けている銀河のその口唇にキョウヤは顔を近づけ口吻けた。
口吻けからも逃げられないように、しっかりと顎を指先で押さえながら。
突然のキスに驚いたその衝撃で、銀河が手にしていた未開封のペットボトルは持ち主の手を離れて床へと転がっていった。
「ン、･･･んふッ、･･･ンン･･･ッ、んぁ −ぷぁッ」
「･･･あとでもっと味あわせてやるから、覚悟しとけ」
キスされて涙目になった銀河の瞳に映ったのは、キョウヤが自らの八重歯の部分を舌で転がすように舐める姿。
それを見た銀河は心の中で「どらやきとかに嫉妬するなよぉ･･･」、そう呟いたのだった。
2012/4/5
突発でした!
4/4の日は何の日?
どらやき、あんぱん、獅子･･･えとせとら。