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□04 さいかい。
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部屋に残された二人の間に3秒ほどの沈黙…


破ったのは私だった。



『えっと…、奥村君はどっちがやりたいですか?』



私は彼に気付いているが、きっと彼は私に気付いていない。


ホクロの位置が完全に一致してるし。

気付かない訳がない。



「あ、僕はどちらでもいいですよ。君は?」



君…ってことはやっぱり気付いていないのか。


そして遠慮しているのか。

…相変わらずだなぁ



私も少しは遠慮した方がいいのかな。


でも、代表挨拶なんて絶対に嫌だ。


入学早々目立ちたくない…
けど我が儘な奴だと思われてしまうだろうか。



んー、まぁいいか。



『じゃあ私、授与のほうでもいいですか…?』


「もちろんいいですよ。では記入しましょうか。」


久しぶりに見る奥村君の優しい笑顔に緊張が少し軽くなった。

相変わらず良い人だなぁ。



『じゃあ書いちゃいますね。奥村雪男君…ですよね。』



「っ!!??


…何故、僕の名前を?」


奥村君は少し考えた後尋ねた。




『私、紫淡侑花です。覚えてますか?』




幼かった頃、家族同然で一緒に過ごしていたのに覚えられていなかったらかなりショックだ。


でもそんな心配は無用だった。



「えっ!?侑花!?」


『はい。侑花です。お久しぶりです。』


「本当に久しぶりだね。全然気付かなかったよ。」


『覚えててくれて良かったです。あ、じゃあ記入終わりましたし帰りましょうか。』



そうだね、と私達は席を立つ。



…ん?……あれ?


……って奥村君でかっ!


ガキの頃は私の方が大きくて、泣き虫であんなに可愛かったのに…


時間の経過って怖いわぁ。

「…どうしたの?」


『あ、いや、そういえば!奥村君はもう祓魔師なんですよね?それと奥村君の寮って旧男子寮ですよね?』



「うん。そうだけど…」



『じゃあ寮までの鍵持ってますよね。一緒に帰りませんか?ていうか寮までその鍵で連れていってくれませんか?』



私こんなに喋るキャラじゃなかったのになと思いつつ、


奥村君の頭上のクエスチョンマークを無視し尋ねた。


「もちろんいいけど、僕にも色々侑花に聞きたいことがあるんだ。

別の場所で話せないかな。」


この流れはおおかた予想できていた。



『いいですよ。場所は任せます。』



そして連れて来られたのは古びた教室だった。


『ここは?』


「祓魔塾だよ。」



なるほど。
じゃあ私はここに通うのか。

でもなぜ奥村君がここの鍵を持っているんだろう。



「今年度から、ここの講師を勤めるんだ。」



一瞬、疑問をこぼしていたのかとひやりとした。


『そっかぁ。もう一人前の祓魔師なのか…』



「じゃなくて、どうして僕が祓魔師って知ってるの?それに侑花は祓魔塾に通うために北海道へいったんだよね?」


『…うん。……わかった。全部話しますからとりあえず座りましょう。』



…なにから話せばいいのか少し思考を整理する時間が欲しかったが、



とにかく、なにからも何も、全てを話さなければいけないんだから順番なんてどうでもいいか。


筋道を立てて話すのは苦手だな。


一つの長椅子に少し間を取るようにして二人腰掛け、



奥村君の眼鏡ごしの視線が気まずく、それを避けるために目の前の机を見つめながら私は話しはじめた。















→次回、ヒロインちゃんの過去が明らかに!

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