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□10 じゆく。
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ぐだぐだと考え事をしていたらいつの間にか塾に着いていた。

さっき雪男に託されたプリント類を持ち直し、ドアノブに手をかける。


ためらうというほどではないまでも、さすがに多少の緊張はしていた。

「…ふぅ」


軽く息を吐き、重いドアを開ける。


目線を上げるとそこには見知った顔が、目玉がポロリするんじゃないかってくらい目を見開いて、固まっている奴がいた。



「久しぶり。


……燐?大丈夫?」



声をかけても反応してくれない。


これじゃあまるで私が人違いしている痛い子みたいじゃないか。



「おーい。りーん。」




「……おぅふ!!

侑花っ!?

なんでここにいんだよ!?
お前北海道にいったんじゃなかったっけ?」


燐のあまりの驚きようにこちらまで驚き、大声を出されて苦笑するしかなかった。


「…お、驚きすぎじゃない?


えーと、帰ってきたんだ。…ここの学校に通いたくて。」


「そうだったのかー。まさか塾にお前がいるとはなぁ。
びっくりしたぜー。

これからよろしくな!!」



昔から変わってない、ニカッ!っという効果音がつきそうな笑顔を私に向け、俺の後ろ空いてるぞと教えてくれた。


礼を言い、燐の後ろの席に荷物を置こうとすると、



「っぅうああああぁぁぁああ!!!!」



いきなり悲痛?な悲鳴が教室内にこだました。


そしてその声を 侑花は聞いたことがあった。




「っ 侑花ちゃん!!? 」



そうだ、志摩くんだ。


「あ、はい。
また会いましたね。」


「これはもう運命としか思えへんわ!!

侑花ちゃん!
俺の隣座りぃ!!」


志摩くんはニヤニヤへらへらしながら自分の席の隣の机に手を置く。



燐がせっかく教えてくれたのに、でもこんなに言われたら断るのもかわいそうだ。



少しの葛藤の末、燐にお礼と謝罪を言い 志摩くんの隣にカバンをおろした。



そして雪男先生に託されたプリントを塾のみんなに配る。


人数も少ないし、配布がてら挨拶を済ませてしまおうと思いつき、はっとする。


雪男はそのために私にプリントを託したのだろうか…

私がみんなと打ち解けられるように…


いやしかしだがまさか…

だとしたら彼は天才だ。
全力で敬おうと思う。




まずは、女の子二人組だ。


「はじめまして。 紫淡 侑花 です。これから宜しくお願いしますね。これ、配布物です。」



「あ、ありがとう。わたし、朴朔子です。こちらこそ宜しくね。」


朴さんはすごく柔らかい笑顔を持つ女の子だ。

私が憧れるタイプの子。


そしてこっちは、

「神木出雲よ。


…っよろしく。」


…よろしくまでのその間はなんですか!?


まさか照れてるんすか!


ツンデレすか!



可愛いなおい。




ここの塾には私以外にこの子達しか女の子はいないけれど、十分だな。(何が



可愛い女の子達と喋れてるんるんな 侑花 は続いて不思議なオーラを放っている人達のゾーンへ入っていった。


「あの、 紫淡 侑花です。これから宜しくお願いします。これ、配布物です。 」



うさぎのパペットマペットを持つ少年は、配布物を受けとると(うさぎが)また下を向いてしまった。



フードを深く被っている人も「ああ。」とだけいってうつむいてしまった。




まぁ、無視されるよりはましかと自分を励まし、志摩くんのいるところへ向かう。


そこで気づいた。



志摩くんの近くにはついさっき仲良くなった勝呂くんと三輪くんもいた。


さっき、隣に座るよう誘われた時気づかなかった…

一瞬驚きはしたが、京都組の人の良さを思い出し、むしろほっとした。


しかし三輪くんとは
あまり話してないことに気づき、
なんとなく話しかけてみた。


「み、三輪くん、
三人とも、出身同じ?

話し方がみんなそっくりだよね?」


「あぁ、紫淡さん。

はい。
僕ら京都から来たんですよ。

紫淡さんは北海道やったよね?


「はい。

関西弁っていいですよね!
憧れるし癒される」



三人とも京都出身であると知り、穏やかな喋り方にも納得がいった。

また、勝呂くんとは学校でのクラスも同じで、雪男と私と席が近いことがわかった。


クラスでもよろしくと挨拶を終え、もう一度ボス呼ばわりしたことを心の中で詫び、自分の席へと戻った。





みんないい人でよかった。
個人的に三輪くんと神木さんはツボだったな。




燐もおそらく…多分おそらく馴染めるだろうと安心したが、問題はこのあとだ。


雪男「先生」が入ってくる。


燐はきっと受け入れられないかもしれない。



そうしたら…




考えてもムダか。


雪男なら上手くやってくれる。


だめだったら私もフォローすればいいだけだ。




今、最も考えなければならないのは、どうやって神木さんと仲良くなるかだ。





侑花は、雪男が来るまで一人悶々としていたのだった。








おわり
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