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□てれぱしー?
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…緊張してきたぁ……
私、紫淡侑花は奥村雪男の恋人であり、今日は一緒に花火大会に行く約束をしている。
デートなどもう何回も行っているから今更緊張することもないんだろうが…
今日は浴衣を着ているためか、少し恥ずかしいのかもしれない。
緊張で少し気持ち悪くなってきたが、帯をきつく締めすぎたせいにしておこう。
待ち合わせ場所に行くとすでに雪男君がいた。
元から背が高いのと、私服のせいもあり、普段より大人っぽい気がする。
…やばい。格好良すぎやんけ!!!
「…ん?侑花?どうしたの?」
『あっ、なんでもないよ!ごめんね、待ったよね?』
「大丈夫だよ。僕もさっき着いたばっかりだから。じゃあ行こうか。」
そういってさりげなく手を繋いでくる雪男君はいつも私の胸を高鳴らせる。
心拍数が上がってしまった。
…それなのに
「浴衣すごく似合ってるよ。」
だなんて言われたら心臓がはち切れそうじゃないか。
どうしていとも簡単に私の心臓を攻撃してくるのか。
こんなに緊張していたら花火どころではないなと気付き、意識を繋いだ手から周囲へと移した。
やはりお祭だから沢山の屋台が出ている。
わたあめ、チョコバナナ、林檎飴、イチゴ飴は必須だ。
……しかしここは女の子らしく遠慮しておこう。
「侑花、チョコバナナ買っても良いかな。」
『もちろんいいよー!』
一瞬、独り言を言っていたかとひやりとしたが、大丈夫だった。
「チョコバナナ一つ下さい。」
一つ…ってことは雪男君の分だけだよね。
チョコバナナと雪男君と私は手を繋いでまた歩き始めた。
花火もうすぐ始まるねって言おうと雪男君の方を見る、と、目の前に半分のチョコにコーティングされたバナナと雪男君の笑顔。
「チョコバナナ半分あげるよ。」
……あぁ。私の隣には天使様がいらっしゃいます。
気を遣ってくださった天使様は1本まるごとではなく半分こ、というしかもとてもさりげなく私にチョコバナナを与えてくださります。
『はぁぁ〜。幸せ〜。』
左手にチョコバナナ、右手に雪男君。
幸せすぎて恐ろしくなる。