short

□ぽーかーふぇいす。
1ページ/2ページ





今日は雪男くんと花火大会にやってきた。




花火は終了したが私の無言の抵抗により、今だにベンチに座り続けている。



雪男くんも隣に座ってくれる。



あと15分だけここにいようか、って指を絡めてきてくれる。




雪男くんの肩に頭を寄せると、同じように私の頭の上に雪男くんの頭が乗っかる。






……もう15分経ってしまっただろうか。



『そろそろ15分経ったかな?一緒にいてくれてありがとう。』




ちょっと…いやかなり名残惜しいが、ベンチから立ち、つられて雪男くんも立ち上がった…が、



『わっ!!』


ぐいっ、と繋いでいた手をひっぱられ、勢いよく雪男くんの胸にダイブしてしまった。



『ゆ、ゆゆゆ…ゆきおくん!?』


「まだあと3分残ってるよ?」


『へっ?』


いつの間に時計を見たのか。



「侑花が早く帰りたいならいいけど…」



といいながら抱き締める力を強める。
離さないぞと言わんばかりに。


『いや、できることなら…ずっと一緒に、いたい…よ?』


雪男くんに抱き締められるのは初めてではないが
鍛えられがっしりした胸板と温かさに酔ってしまう。



心臓がばくばくしている。

雪男くんにばれてしまわないか心配だ。



「それなら良かった。」




腕の力を弱めたかと思えば、私の頬に手を添え、ちょっと微笑む。



いっつも雪男くんはずるいと思う。どうしてそう余裕な表情でいられるのだろうか…


手を繋ぐ時も、抱き締めてくれる時も、緊張しているのは私だけみたいで悔しい…


今ももう少しで鼻がくっついてしまいそうな近さなのに、雪男くんは涼しげな顔をしてる。



こんな至近距離で見つめられ、頬に手を添えられ、いくら鈍感な私にもこの状況は理解、できる。




…きっ、き、キス。だ。初めての…


まずい…
顔が熱くて熱くて、真っ赤だろう。
ライトのせいでお互いの顔をはっきりと見ることができる。




ライトが消えてしまえばいいのに…




「侑花、顔熱いね。」

そう言って私の頬でぺたぺた遊んでくる。


反論したいのに、

雪男くんの吐息が唇にかかり、心臓が止まってしまいそうだ。


返事をしようにも、今は呼吸をして心臓を動かすのに精一杯でそんな余裕はない。


雪男くんはさらに微笑み顔を近付けてくる。




……こつん、とおでこがぶつかり目をつぶった瞬間…


…唇が触れ合った。




優しい、触れ合うだけのキス。



頬に添えられた手はいつの間にか私の髪を梳いていて、


触れ合う唇も髪を梳く手も全てが優しくて 、




このまま時間が止まってしまえばいいのにと切実に思った。



唇が離れ、つむっていた目を開けると、
雪男くんの顔を見る前に再び強く抱き締められてしまった。




その時ふと見えた雪男くんの耳は、

赤く染まっていた。



『雪男くん、耳真っ赤だよ。』



さっきの仕返しをしてみる。



「…うるさい。」



私の肩に顔を埋めてきた雪男くんが、世界一愛しいと想った。













end。
→あとがき
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ