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□05 いまはむかし。
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奥村君が納得できるよう、論理的に話すのが苦手ながらも、私の知っていることは何でも話そうと決めた。
てことで、昔話始めました。(冷し○華始めました風)
『えっと、確か5歳くらいから奥村君達と一緒に住まわせてもらってて、
9歳の頃に北海道に引っ越してひたすら祓魔師の訓練をしていたんです。
それで13歳の時、奥村君も受けたと思うんだけど、祓魔師の試験を受けて私は不合格。
でもその後、メフィストさんが私の所に来て事情を話してくれたんです。」
燐の炎が倶利伽羅に収まりきれてなく、暴走する恐れがあること。
獅郎さんが魔神に体を狙われていること。
そして万一獅郎さんが居なくなった時に、燐の監視役が必要であること。
私が話している間も、
奥村君はずっと私から視線を逸らさなかった。
きっと奥村君は頭が良いからこんな話でもちゃんとすんなり理解してるだろう。
『…つまり、奥村君は祓魔師として、私は一般生徒ととして燐を監視するってことです。』
燐が祓魔塾に通うというのは現時点ではまだ知らないだろうけど、後々分かるから今は言う必要はない、かな。
「でもそれなら、」
『?』
「"万一"って言ってたけど、神父さんのことは知っているんだよね。」
『…うん。メフィストさんから全て聞いたし、お通夜にも行った…』
そこで2人を見かけた。
…でも声をかけることができなかった。
気の利いた言葉など何も浮かばなかった。
私は辛い状況の中に2人を置き去りにしてしまった。
…2人を守ると誓ったくせに。
「そっか。…来てくれてありがとう。神父さんもきっと喜んでるよ。」
張り付けたように微笑む奥村君の笑顔が余りにも自然なもので、なのに痛々しくて、
ごめんなどと言ってはいけない気がして、
ありがとうと呟くことしか出来なかった。
私がもっと強ければ、
奥村君は弱々しい姿を見せてくれるのだろうか。
たとえ奥村君が私を頼ろうとしなくとも、
彼の荷物を少しでも多く背負えるよう、強くなろう。
よし、そうしよう。