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□05 いまはむかし。
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「……でも、侑花も兄さんの監視役になってくれるなら僕は助かるけど、
…侑花はそれでいいの?
祓魔師になるために北海道にまで行って訓練してきたんだよね。
一般生徒のままで、本当にいいの?」
少しは悩むべきかとも思ったが、この質問は想定内だったし、答えは決まっていた。
『もちろんいいに決まってるよ。祓魔師になりたいのは、燐のためだから、それが果たされるなら何にでもなるよ。』
正確には燐と奥村君を守るためだ。
二人を守ると 獅郎さんに誓ったんだ。
そもそも私と奥村君を祓魔師に誘ったのは獅郎さんだ。
私は5歳の時に両親を亡くしたが、ショックで当時の記憶がない。
だから獅郎さんや奥村君や燐と一緒に生活するのが当たり前だと思っていた。
それでも、何故私はここにいるのか、自宅ではなく修道院で生活しているのか、疑問はあった。
しかしいくら獅郎さんに問うても決して話してはくれなかった。
知りたいとは思ったが、奥村君達と遊んでいるうちにそんなことはどうでもよくなったんだ。
奥村君はいつも男の子達に虐められていて、助けに入ったつもりの私も虐められてしまった。
そこに毎回燐がヒーローみたいに助けに来てくれた。
そして私達が7歳の頃、
獅郎さんに誘われた。
「…雪男、侑花
神父さんと一緒に
戦わないか
闇に怯えて生きるより
強くなって
人や燐を守りたくないか…?」
この言葉をきっかけに私達は祓魔師の訓練を始めた。
祓魔学を学ぶにつれ、増していった知識によって私は何かに感づいたのか、
8歳の冬、奥村君達の誕生日の日、私は獅郎さんと約束をした。
『私がここに来た理由が、もし悲しいことだったら、きっとゆきくんはりんも私も守ろうとするでしょ?それはすごく大変だから、絶対に内緒だよ!私が、ゆきくんとりんを守るんだ!』
この時涙目で笑いながら私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた獅郎さんの顔は一生忘れない。
それから更に腕を磨き、9、10歳の頃、北海道の祓魔塾に通うべく奥村君達と別れた。
奥村君達の元に戻って来れたのだから、とことん二人を守ってみせる。
「侑花……ありがとう。」
『当然のことだよ。お礼なんか要らないよ?』
私が微笑むと奥村君も少しの躊躇いの後微笑んだ。
もう話は終わりかなと席を立つと、
「あ、待って」
と腕を掴まれた。
「あのさ、ずっと気になってたんだけど、どうして兄さんは名前呼びなのに僕は苗字でしかも君付けなの?」
どうしてだろう…
『ノリ?』
「海苔?」
『…ノリです。ほら今日は初対面って設定だったから…』
「設定ってなんだよ……昔みたいに名前で呼んでよ……」
ちょっ……
なんだコイツ可愛いな///
『じゃあ雪男…』
「うん!ありがとう。」
おく…雪男の満面の笑みが子供っぽくて可愛いなぁ
私が立ってて雪男が座ってるからちょうど良い高さにある頭をよしよししてみる。
「な、なに?」
『ノリ?』
おわり。
→あとがき。