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□あまいもん。
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奥村雪男15歳ただ今侑花の部屋の前に構えている。
深呼吸をして、ノックをする。
侑花の部屋に入るのは初めて、というか付き合ってから二人っきりになるのは初めてだから僕でも緊張する。
ドアが空いて侑花が顔を覗かせる。
…その上目遣いは反則だ。
「あ、おはよう。」
『うん、おはよ。
どぞどぞ、中入ってください。
一応掃除したんだよ?』
部屋に入って若干驚いた。
侑花は普段クールというかさばさばしてるというか冷静というか…
そんなイメージだから部屋もこざっぱりしていて黒や寒色系かと思ったけど、
実際の侑花の部屋はパステル系の淡い紫やピンクのものが多く、ぬいぐるみなんかもあって、可愛らしくて意外だった。
「可愛い部屋だね。ちょっと意外。」
『そうかな。自分の部屋なら可愛くても誰にも何も言われないしいいかなって。本当は可愛い小物好き。』
侑花が自室に人を呼ばない理由がわかり、そして僕を部屋に呼んでくれたことを改めて嬉しく思った。
「可愛いものが好きなのもギャップがあって可愛いね。
あ、お菓子持って来たんだ。これ。」
前半僕が言ったことに若干動揺しつつ、ありがとうと言ってお菓子を受け取った。
もっと動揺した侑花が見たいと思った。
彼女といると僕は意地が悪くなってしまう。
こういうのを隠れSというらしい…
「…でも学校ではいつも通りの冷静で大人しい侑花でいてよ?」
『え?うん、まぁ……なんで?』
「わかんないの?」
そう言って侑花に近づき、手を握ってもう片方の手で頬を撫でると、さすがの侑花もおどおどし始めた。
『え…っと、ごめん…わかんない。
…てか、…ち、近い。』
目線を泳がせて僕の目を見ようとしないから侑花の顎を軽くつかんで上げる。
上目遣いで視線が絡まったけれど、その表情があまりにも可愛いすぎて負けそうになる。
「…侑花は僕の前でだけ可愛いければいいよ。」
瞬間、ぼっという効果音が聞こえてきそうなくらい真っ赤になった。
『ななななななにいって……もう………お菓子食べよ。』
お菓子に逃げるの!?とツッコミたいとこだが、僕も自分で仕掛けたくせにギリギリで理性を保っていたため、余裕はなかった。
「……可愛いすぎ」
このつぶやきは届いただろうか。もはやどちらでも構わないな。
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