青エク

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「アイツになんもされんと触って帰ってきたら勝ちや!もちろん、俺もやる」


大きく勝呂くんの声が響いた。
正気なのか、この人。

リーパーは弱いとはいっても、とても厄介な悪魔だから
下手すれば訓練生は危険な状態になるかもしれない。


「ハッ、おもしろそうじゃねぇか!」


燐も勝呂くんもニヤリと笑った



「なんて言うとでも思ったか、バーカ」



意外と燐のほうがこういう時に大人なのかもしれない


『やめなよ〜、危ないし』

「そうそう。俺もお前と同じ野望があるしな。こんなとこで死んでらんねぇんだ」

「野望・・・?っ!お前等言うたなー!?」

「「ははっ、さあー?」」



血筋を立てて向こうにいる志摩くんと子猫くんを怒鳴りつけた



「俺はやったる!そこで見とけ腰抜け!!」

「はぁ!?」

『ちょ、勝呂くん!!』


誰の声にも耳を傾けようとせずにズンズンとリーパーへ近づく。

リーパーも不思議そうに見てるが、目を見て相手の表情を抉り取るように見ている



「俺は魔神を倒す!!!」



更に大きい声で訓練所いっぱいに響きわたす。


「あはははっ!!ちょ、魔神倒すとか、子どもじゃあるまいし!」



しまった

ここにして出雲ちゃんが笑いながら野次を飛ばす。



『勝呂くん逃げて!!』

「!?」


涙目の勝呂くんをリーパーが襲い掛かろうとする。


立ち上がろうとした瞬間、見学側のほうから燐が勝呂くんに向かって飛んだ



『燐!?』


ガブッ!と音を立てて思いっきり飛ばされる

砂埃がたってどうなったかよく見えなかった。



が、埃が静まって、そこにいたのは棒立ちで固まってる勝呂くんと、

リーパーを手なずけている燐だ。



見た瞬間安心して、ズサァァと塀を降りた。




「魔神を倒すのはこの俺だ!お前はすっこんでろ!!」

「な、なななな、なんやねん・・・!!お前死ぬ気かああああ!!!」

「ブホッ!?」


勝呂くんに肘拳をくらい燐がなだれこんだ。



『大丈夫?二人とも』

「お、おぉ・・・」

「・・・すまん」

『・・・この、アホっ!!』


ニコッと笑っていれたものの、今更押さえることなんて出来るわけないじゃないか


思いっきり二人の頬をぶってやった


『なんのためにあたしがこんな走ったり頑張ったと思ってんの!!
ほんとに勝呂くんも燐も死ぬ気!?
全体的に舐めてんじゃないよバカーっっ!!!』

「す、すまんかった」

「ごめん、なさい」



久々に怒鳴り散らして、息を切らしてしまった。


『それから出雲ちゃん!!』

「な、なによ・・・」

『人の夢笑うなんてダメでしょう!?
どんな夢だって叶えようと必死にみんな頑張ってるんだからぁ!!』

「わ、悪かったわね」



珍しく出雲ちゃんが素直になった。

・・・普段からそうしておけばいいのに。


なんて声に出したら今度はあたしが殺されそうだから言わない



「桃ちゃんもこうやって怒りはるんやなぁ」

『怒るもん!』

「いつもニコニコしてはるから聖人か思うてたわ〜」

『久々に怒って疲れた』

「おつかれさん」


志摩くんが頭を撫でてくれて今日の塾は終わった。




*******************


『やほ〜』


次の日の塾も、今までと変わりない座り位置だ


「おう、今日は遅かったな!」

『え・・・何、夢かな・・・』

「何が」

『だって燐が勉強してる〜〜〜!!!』

「そんな驚くことじゃねぇだろ!!」

『すごいっ!燐偉いよ〜!』


昨日のことがあってか、
燐がいきなり多くの祓魔師に関する書物を置いて勉強しているのだ

感動しないわけにはいかにでしょう


あまりの感動に燐に抱きついてしまった



「うぉい!」

『だってすごいじゃん!』

「兄さんが勉強なんて・・・何かの前触れ?」

「雪男まで!!」


途中できた雪まで燐をみてビックリするのだ。


「つか前髪邪魔だな」


するとズンズン、と勝呂くんが燐の目の前に立った。



「なんだよ、お前まで俺をバカにしにきたのか」

「そのー・・・昨日は、ありがとぉな・・・コレ、俺が夜勉強するときに使うやつや」


勝呂くんの手にはしっかり前髪を固定するピンが握られている。


あぁ、なるほど。
勝呂くんはやはりいい人だ



「うわ・・・何かの前触れか・・・?」

「お前!人の真心を!!」

「うおーっ!スゲェ!ありがとうな、勝呂ぉ」

『あたしにはなにもないのー?』

「これでも食っとけ」


ポッケから出てきたチョコレート菓子をあたしの頭の上に乗せて
志摩くんや子猫くんのとこにもどっていった。




めちゃくちゃいい人じゃないか。



「桃、昨日の、もう怒ってねぇ?」


恐る恐る聞く燐がおもしろくて笑ってしまった



「へ?うん怒ってないよ」




時間が経てば何も気にしない



(お菓子3つで許してあげる)
(・・・はい)





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