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□Summer Sunny Day(※R18)
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夏の日本は暑い。気温だけなら母国も相当なものだが、この国には湿気というバケモノが巣くっている。茹だった空気は陽が落ちて夜になっても冷めることなく、ひたすら不快感を煽ってくれる。

休暇中であり、長袖にロングボトムプラスブーツの隊服を着なくてすむのが幸いだった。あんなものを着て歩きまわった日には、敵に倒されるより先にのぼせて倒れそうだ。

もっとも仕事中は全神経が緊張しきっているせいか、暑さも寒さも感じないし汗もかかない。けれど任務が完了したとたん、五感が一気に正常に動きだしはじめ、ひどい反動がくる。

――日本での仕事は絶対断ろう、特に夏。

スクアーロはひそかに決意してみたが、どうせ指令がくだれば文句は言いつつ従う自分もわかっていた。

そうそうめったにはないが、日本での『仕事』となればヴァリアーに、それも幹部にくだされるものと相場が決まっている。

なにせこの国では異国人はひどく目立つ。おまけに、人気のない場所にぽつんと置かれた自動販売機も壊されず、たいていのホテルでは部屋に荷物を置きっぱなしにしても盗まれないという治安のよさだ。暗殺なんて仕事はやりにくいことこの上ない。

それはともかく。

「ったく、このクソ暑いところで休暇ってどんなだ!?」

両腕に戦利品の山を抱え、スクアーロは滞在中のホテルへと戻った。

たまにはゆっくり休みなよなどと言われ招待されたのはいいが、本来行くはずだった離島には未だ行けていない。手違いで準備が整わないとかで、今日で三日、都内のホテルで足止めをくらっている。

あいつはどうしてこう、段取り悪ぃんだあ?

頭に浮かんだボンゴレ十代目、沢田綱吉の暢気な顔に、スクアーロはひとしきり文句をぶつけた。

『白蘭とやりあったあと、ずっと忙しくしてるんだよね? たまには骨休めしたらどうかなあ』

沢田綱吉に告げられたのは、しばらくまえのことだ。スクアーロが出向いての打ちあわせをすませたあと、雑談の途中でぽんと告げられた。




ヴァリアー側とボンゴレ十代目との打ちあわせは特に、文書に残せない話が多い。文書どころか言葉にすらだせない内容もあり、表情と態度での『暗黙の了解』というやりとりが必要だったりもする。

電話での会談は盗聴される怖れが、インターネット回線を介してのやりとりはハッキング、トラッキングの危険があり、文書は奪われれば終わりだ。直接会って話すのがいちばんてっとり早く、しかも秘密を守れる。昔ながらの方法に頼るのがいちばん確実だった。

ボンゴレ日本支部、綱吉の巣でだされる日本茶にも、もうだいぶ慣れた。

「熱いから気をつけて」

左手で無造作に掴むと、綱吉が言った。すぐあとに無駄な注意だったと気づいたようで、あっという顔をする。

「何回同じこと言やぁ気がすむんだあ?」
「ごめん。俺、しょっちゅう火傷するんで、つい」
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