ららかわ

□こんにちは
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荒川。



そこは、ひとつの世界だった。






「よう。」



思い返せば、一時間前。私は家族を無くした。亡くした訳では決して無い。無くした。もともと不仲だった私の両親は、二人揃って新しいパートナーを見付けたらしい。そして、二人揃って私を捨てた。

別に構わない。と言ったら嘘になるのかもしれないが、構わない。彼らが私にしてくれたことと言えば、資金の提供だけだ。資金、わたしが大人になるための資金。

小さかった頃は、人知れず泣いたりもした。でも、私ももう21だ。それなりに、人との出会い別れを経験した。今は何も世界は両親だけではないことを知っている。

別れは思っていたよりもずっと、あっさりしていた。さよなら、その言葉だけで荷物をまとめ、家を出た。

そして、荒川の河川敷にふと、降りてみた。ところ、緑が視界に入った。決して自然の色では無い、鮮やかな、緑。



「よう。」


目が、合った。


『か…』

「河童?そうだよ、河童だよ。」


瞬間、出会ってはいけない人に出会ったと確信した。首が、見えてるんです。人間の首が。

相手にしたら負けだ。こういう類のひとは無視が一番。

何事も無かった。そう思い立ち去ろうと向き直ると、鮮やかな黄色が目に入る。


『星…?嘘でしょ…?』

「おー、よく分かったなあ。そうだ、そいつは星だぞ。」

「俺を知ってるのか…?」

見たまんまなのか。


…考えよう。電波さんって、まあ一日に一回は見かける。晴れていても必ず傘をさして特定の時間に現れるだとか、ぴんぽんだっしゅをして回る人とか。でも、電波さんって、群れるの?

知りません、無意識に答えてしまっていた。河童の顔が明るく…なってしまった。
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