淡い夢
□記憶の欠片
1ページ/33ページ
当時、小学生だった私は、母方の祖母の家に一人で遊びに行ったことが何度かあった。
祖父は、母が小さい頃に亡くなっているので、祖母は山奥にある小さな村に一人で住んでいた。
その村は、とても空気が澄んでいて、小鳥の鳴き声や木が風に揺れる優しい音がするとても気持ちの良いところだった。
祖母の家に着くと、私は決まって、近くの森の中や神社に遊びに出かけたりした。
そのときのことで、少しだけ思い出せるのは、祖母の家の近所にある神社の中で会った男の子達の背後には、今までに見た事もないような大きな獣のような霊が憑いていたということ。
小さい頃から、普通の人には見えないモノが見え、霊と話をすることも出来る私は、霊に対しての免疫はそれなりにあるつもりだった。
けれど、今までに見た霊の中でも最大級の大きさの霊は、体が震えるほど怖かった。
その大きな霊は、男の子達を見えない力で縛り付けるように一人ひとりにぴったりと寄り添っていた。
それから何か話したような気がするけど……話した内容も他のことも何一つ思い出すことが出来ない。
当時の私はそれを思い出そうと必死に努力した。
けれど、いくら一人で遊びに出掛けた時のことを思い出そうとしても、そのときのことをはっきりと思い出すことができない。
小学校を卒業し、中学、高校と上がるにつれて、勉強と部活とアルバイトの両立の忙しさもあり私は徐々にその出来事を思い出そうとしていたことさえ忘れてしまっていた。
あれから10年近く経った今。
私はそのときの出来事を完全に忘れてしまっていた。
.