short

□泡となり消えゆく
1ページ/4ページ

「ナギ」
「何だよ」
「人魚姫の話、知ってる?」
「…」
「な、なんで黙るの?」
「…知ってる」
「え、ほんと?」
「嘘言ってどうすんだよ」
「あ、そ、そうだよね、ごめん」
「何で謝るんだよ」
「…顔、怖い」
「…生まれつき」
「何で知ってるの?」
「知ってちゃ悪いか」
「…そういうわけじゃないけど」
「…ソリア」
「え?」
「ソリアが、話してた」
「……ふぅん」


これだから、女は厄介なのだ。
ナギの口から思わずと溜息がこぼれる。

確かに昔好きだという感情を持っていたかもしれないが、今となってはそんな感情を持っているわけでもないのに。
今欲しいのは目の前の存在だけなのに。
それすら、わからないのだろうか。

少し拗ねたように唇をとがらせて、不満げそうな双眸をぱちくりとさせている。

「お前、ソリアと仲直りしたんだろ」
「それとこれとは、話が別だもん」
「…わがまま」
「わがままですよー」

それきり、ぷいと顔を逸らしてしまうゆきじるし。
二人きりで、少し明かりを暗くしたこの狭い一室で、ただ一人の相棒にそっぽを向かれては何もすることがない。
ナギはもう一度大きなため息を零した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ