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□episode.1
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時折零れる水の、ぴちゃんと跳ねる音を数えていたら、その数は一万にも上った。
時間の感覚がわからないままできることと言えばそれだけで。
冷たい金属に繋がれた手首の感覚がだんだんと無くなってきた。
引き裂かれた衣服だけでなく、そこから露出された肌にこびりついた血の匂いが鼻につんとくる。
時折耳元で煩わしくは音を立てる虫と、汚れた足に這い上がる虫と。
それすら払う気力のない疲弊した身体。
だが、まだ死ぬわけにはいかない。
真実を伝えに行かなくてはならない。
その瞳に宿る闘志は、静かに燃え続けていた。