long

□episode.2
1ページ/7ページ

「なんだか、スゴイ話を聞いちゃいましたね…」

船に帰るまで無言でいたトワが、静かに口を開いた。
荷物を倉庫に置きながら溜息とともに言葉を吐き出す様子は、興奮止まぬといったものだ。

「…ああ」

ナギも否定する気にはなれなかった。
そして、そっとペンダントを取り出して眺める。
美しい夜空をそこにはめ込んだようなペンダントは相変わらず美しい。宝物に目がない船長が気に入りそうな作品だ。

(どうせ、買って帰ってくるだろう、それも大量に)

あの船長のことだ、一人でふらふらとしているときに買いに行っているに違いない。
買ったばかりの野菜を冷蔵庫に入れるものと倉庫に置いておくものと分けながら、トワが小首をかしげた。

「疫病の話は、シンさんかソウシ先生に聞かないとさすがにわからないですね」
「そうだな」
「私がどうかした?」

そこへ、自分の名前を聞きつけたちょうど良いタイミングに、両手いっぱいに買い物袋を抱えたソウシがひょっこりと顔を出す。
その声を聞きつけ、トワがぴょこんと跳ね上がるかのように反応した。

「あ、先生!おかえりなさい」
「ただいまトワ、ナギ。一瞬海軍がいるのかと思って、びっくりしたよ」

その証拠に、足が肩幅に開き戦闘態勢を取ろうとしていたソウシの姿が振り返れば確認できた。
トワは微苦笑をして、変装なんです、と言った。

「君たちまでお祭り騒ぎに便乗しているのかと思ったよ…この島は処刑が行われるってのに、スゴイお祭り騒ぎだ」
「それにもわけがあるそうですよ?」
「へぇ?情報が集まったのかい?」

トワの言葉に驚いたようにソウシが目を見開くが、すぐに感心したように微笑んだ。
その様子を見ると、彼はどうやら薬草を買い漁るのに夢中で情報収集をしてきたわけではないらしい。

どうやら情報収集などの類は、見習いを引き連れたナギだけの役割のような可能性が濃厚となってきた。

(厄介モン押しつけやがって)

少しだけソウシを冷たい目で見やったが、その視線の意図に気付いてか気付かずか、ただ微笑み続けるだけのソウシにはかなわず、すぐにふいっと視線をそらす。

「でもトワ、もうあと小一時間もすれば処刑は始まるよ」
「えっ、もうそんな時間ですか?」

驚いたようにトワが腰に括り付けた懐中時計に視線を落とす。
合わせてそれを覗き込むと、その時計の針は、ソウシの言うとおりあと一時間もせずに処刑の時間を指している。

この船に戻ってきているのは、どうやらナギとトワとソウシの三人だけらしい。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ