SS.

□my girl
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your side




握手会をあとにする。
メンバーはとても可愛くてテンションも上がったし、久しぶりにあんなにたくさんの人に声かけられたなと思った。


『朔大丈夫?疲れてない?』


『え?うん大丈夫。』


マネージャーは私の変化に機敏で、
もう帰ろ?というとうん。と一言私を家まで送ってくれた。仕事だから当たり前だとは思うけど、ここまで私のわがままに付き合ってくれるのは素直に有り難かった。





まだ17時前で、少し晴れない気持ちのまま友達に連絡してご飯を食べようって誘う。

朔が誘って来るなんて珍しいといってすぐに集まってくれる友達に感謝しつつ、私は久しぶりに外食をした。




-




夜も更けて私は店を出る。
食事制限をしていたから最近はめっきりパーティに顔出さなかったけど、たまにはいいなと思った。



そして、見渡せば私のマンションまで大通りを一直線だ。今日はいつもと違う。運動なんてしないけど、たまには歩こう。そう思って私は夜景を眺めながら家まで歩いた。




『ただいまー』


一応一人暮らしでもただいまだけは言う。


けれど今日はそれに反応があった。


『おかえり』


『来てたの?』


『うん。』



そこには理佐がいて、少しだけ不機嫌。
リビングに行くとテレビだけつけられてて、ソファには編集者さんにもらった雑誌が広げられてる。結構、待ったよね。多分。そう思えるその状況に私は少し申し訳なくなる。



『理佐。お疲れ様。』

『うん。ありがと。ご飯行ってたの?』


あっ、と思った。
食事制限に託けて理佐との外食もやだと断って、作ってくれる朝ごはんも今日はごめんいいやと拒否したりしてた。



『少しね。パーティがあったから。』


嘘ではない本当を述べる。



『そうなんだ。』



なんだかぎこちないこの空間に私は少し居心地の悪さを感じて。本当は会えたのすごく嬉しいのに。理佐が元気がないだけでここまでなってしまうことに、今まで理佐が気を遣ってくれてたんだと気付かされた。









『理佐、お風呂入ろう?』


『え?』


今日の私は少し違うから。
いつもどちらも誘ったりしないけど、なんだか特別に今日は理佐と入りたい気分。



『理佐の身体見たい。』


『変態じゃん。』



私がそう言うと理佐は断らないの知ってる。こういうとこもワンちゃんみたいだなーって思う所以で。

私はすぐにお風呂を沸かした。











『ぎゅーして。』


『ん。』


湯船に浸かって、後ろから理佐に抱きしめてもらう。理佐の胸とか大事なとことかが当たってるけど全く気にしないみたいで、言った通りにぎゅーってしてくれる。





『なんで不機嫌?』



『わからない?』




いつも絶対にしないけど腹を割って話そうと思った。そしたら理佐もいつもと違う答えを返して来た。


『ご飯たべたから?』



『ううん。久しぶりに時間できたんでしょ?そんなんで怒らないよ』



んー。怒らないよってことは少なからず怒ってるということで。私はなんかしたっけと頭を回転させる。



『連絡無視したこと?握手?』



私は今日したことを言ってみる。
理佐はうーんって言いながら全く口は割らない。



『理佐?』


『ごめん。朔、私のわがままだから。不機嫌になってごめん』


後ろからぎゅっと抱きしめられる。理佐のわがままなんて聞いたことない。いつも私の意見を尊重するし。


『理佐、言ってみて』

『んーーー。』

『ほら。できるだけ解決したいじゃん。』


実際、私は理佐とこうしたい、ああしたいと言ってはそれを理佐が叶えてくれてて、私は理佐に何をしてあげれるのか不安になる。だからこういう時くらい言って欲しかった。


私が黙って待つからか、理佐は嫌いにならないでね?という前置きをしてポツリポツリと話し始める


『……なんかね、握手会で朔と握手したってメンバーとか、ファンの人に言われて、ちょっと嫌だった。それで、朔も私のとこ来てくれないし。……一目でいいから会いたかった。』


理佐は少し照れたように言う。
その内容は私が理佐に思う嫉妬心と同じで、少し笑ってしまう。


『笑わないでよ。』


『ごめん。それ私がいつも思ってるのと同じだもん。』


『え?』


『握手会に行く理佐を見送るときいつもそう思う。』



私は少しまじめにいつも思うことを話してみた。


『なんか、握手した人がレポとかあげてるんだけどね、私理佐のファンのレポみていつも妬いてるんだよ。私が知らないとこで理佐の手を握って名前呼ばれたんだとか、すごく複雑で。モヤモヤしてるの。』


『そうだったの?』


『今日も、会場に行ったらさ、渡邉理佐っていうタオル首にしてる人が大勢いて、なんかいつもの嫉妬心がリアルになって帰っちゃったの。ごめんね。』



『もう。早く言ってくれればよかったのに。』


理佐はまた腕に力を入れて私をだきしめる。


『理佐も言わないでしょ。こういうの。』


『そうだけど、、。』


『でもね、こやって理佐が来てくれて、私を甘やかしてくれるからいいの。』


『……朔のばか』



理佐は私の首に顔をスリスリと寄せてお腹を撫でてくる。

その手も腕も全部私のものだもん、そう理佐のファンに言いたいけど、そうもいかないもんね、。


相変わらず私のお腹を触る理佐を見て私はにんまりしてしまう。


『太ったかな』


『ふふ、そんなわけないでしょ。』


『太っても好きでいてくれる?』


『うん。大好きでいる。』


『え、そこは止めてよ。仕事できなくなるじゃん。』


『じゃあたまに運動しよう。一緒に』


『え、理佐、、えっち、。』


『………ほんとばか』



そうやって多分顔を赤らめてる後ろのアイドルの手を私は握って、振り向いてキスをした。




end


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