SS.

□風邪っぴき
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『朔大丈夫?遅くなってごめん。』


『理佐、、』




一緒に住み始めて少し経ったころの季節の変わり目に朔が風邪をひいた。朔はよく体調を崩す。本人はそれを見て見ぬ振りをするけれど。


いつもなら看病をちゃんとできるんだけど、私は地方で握手会をしていて家を空けていた。だから、弱った朔のもとに駆けつけたくて仕方なかった。



朔は帰ってきた私をそのままベッドに引き込む。相変わらず白く長細い腕が私にまとわりついてきて、
意外と元気で安心したけれど、朔の身体はまだまだ熱っぽい。



『もー。お腹出して寝てたでしょ?』


『だれも布団かけてくれないんだもん。』


『はいはい。』


私は私の胸に顔を埋めて文句を言う朔の頭を撫でる。


『薬とかは飲んだの?』

『んーん。』


朔が風邪をひいたって言ったのは昨日の朝のことで。薬も飲まずに撮影には行ってたということ。


『飲んで。』


『いやだ。』


私は朔の腕から這い出て、とりあえず家に置いてあった薬を取り出して、朔に手渡す。


『ほら、苦くないから。』

『風邪ひいてないもん。』

『はい。嘘つかない。』


朔は私が折れないと理解したのか、嫌な顔しながら薬を口に運ぶ。
大好きな彼女は目をうるうるさせていて、普段よりなんだか色っぽくてダメだと自分に言い聞かせた。



『飲めたね。』


『もっと褒めて。』


朔は仏頂面でこっちを見てて、いつもより子供っぽいその言動に私は思わず笑ってしまう。


『はーい。よくできました。』


私は何度も何度も握手会で言ってくれと言われるフレーズを口にした。


『んーなんかやだ。子供扱いした。』


目の前の朔はムスッとなるけど、これでも大半の人は喜んでくれるんだよ?この言葉で。


『してないから。てか、明日はおやすみもらえたの?』


最近どっと忙しく働いてる朔は前見たく家でダラダラしてなくて、こんな風に風邪とは言えど、コミュニケーションをとるのは久しぶりだった。


『うん。マネージャーがなんとかしてくれる。』

『良かった。とにかく、もう寝てね。』


私は朔のおでこに冷えピタを貼り付けて布団をしっかりかける。
下からはずーーっと目線を感じるけれど。



『……なに?』


『一緒に、、いてくれないの?』



朔は私の手をぎゅっと握る。
そうだよね。寂しかったんだもんね。
なんだかんだ朔は、仕事をしてる間は私に寂しいだとか会いたいだとか言ってこない


だけど、今回はきっと心細かったんだろう。『理佐に早く会いたい』の一言だけメッセージを送ってきたのだ。




『朔が寝るまで手繋いでおくから。寝て?』



朔は、私の手を引っ張る。
そして一緒に寝たいと、言いたげで。



『もー。わかった。ちょっと待っててね。メイク落としてくる。』


『ふふ、やった。』


朔は行ってらっしゃいと私をベッドから送り出した。




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