SS.
□alcohol
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『愛佳、どうしたの?』
『んーなんもない。』
『なんもなくないでしょ。はい来て。』
私は愛佳を抱きしめてよしよしと頭を撫でた。
『朔お酒くさい』
『えっ、久しぶりに会ったと思ったらそれ?ショック。』
『………また先輩?』
『ごめんね』
18時ごろ急に家に行くと連絡が来たけれど、私は付き合いで飲み会に行かなくちゃいけなくて、愛佳を家に1人にした。
『朔ってさ、モテるよね』
『んー。モテないと思うけど。』
社内でよく合コンに誘われるし、先輩からのお食事の誘いもまあまあある。だから一概に否定もできないけれど、目の前のアイドルをしている彼女にはその付き合いというものは理解されないだろう。
『なんで、愛佳と付き合ってくれるの?』
あ。拗ねてる。
腕の中でそういう愛佳は、可愛い。
私は高校の時から愛佳のこと好きだったじゃん。高3で受験だったのに、彼氏と別れて、なぜか初々しい高1の後輩の愛佳に手を出して、友達には何してんだって怒られた気がする。忘れたとは言わせない。
『ずっと付き合ってるじゃん。今更?』
『ちがう。なんで今も付き合ってくれてるの?』
少しムッとした顔でこっちを向く。
どうやら今日は酔っ払ったふりでは済ませてもらえないみたいで。
『んーーー。好きだから。』
『朔のまわり男の人とかいっぱいいるじゃん。なんで愛佳なの?ってこと。』
ああ。そういうこと。
私は壁に置かれたコルクボードのことだと理解して。
それは大学時代の友達から先日受け取ったプレゼントで、男女仲良く写真に写ってる。
『あれ見て不安にさせちゃった?』
『……』
愛佳は黙り込んでしまう。
『ごめんごめん。ただの友達だし、私は興味ないよ?この男の子たちも女の子も。』
『朔がなくても、向こうはあるかもじゃん。』
はあ。どうすればいいんだろう。
私だってアイドルしてる愛佳の彼女でいることにヤキモチを常に妬いているのに。
私が東京の大学に進学してすぐ、愛佳はアイドルになってそっちで住むと言い出して。私は喜びと不安とでぐちゃくちゃな気持ちだった。
『愛佳だって、まわりのファンとかいっぱいいるけど、それでも私のこと好きなんだよね?』
『………』
『え、好きじゃない?』
私はおどけていうと、いかにも不機嫌ない顔をする。
『ほーら。その顔だめだって。ファンが泣くよ?』
『まじうざい。』
愛佳はプイとそっぽ向いて携帯をいじり始める。
きっとメンバーかなんかにラインでもしてるんでしょ。
私だってそれなりに、変なことをするおじさんや先輩を掻い潜って愛佳のこと考えて生活してるのに。なんなら、いつも愛佳といたいし、独り占めしたいのに。
はぁだめだ、頭痛い
『シャワー浴びてくる。』
思いのほか、無機質な声を出してしまって、あ、やっちゃったと思った。
きっと私の知り得ないところでのアイドルとしてのプレッシャーと愛佳は戦ってるだろうから、と自分をなだめて、できるだけ冷静になろうとしただけなのに。
愛佳をみると
不安そうな瞳をこっちに向けていて。
まあいっか。
私だってたまにはわがままを言いたい。
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