SS.

□記念日
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『朔起きて』

『……起きてる。』

『起きてないじゃんほら。』



そういって目を瞑る朔にキスをする。


『っきゃ、、ちょっと。』

『ふふ、理佐おはよ』


すると朔は私にしがみついて満面の笑みで、うん、これはちゃんと起きてたんだねと私は納得してその頭を撫でた。


最近はすごく幸せ。
あの倦怠期を抜けて、朔は前よりも少し私を大切にしてくれるようになった気がする。



『今日夕方には終わるんだけど、理佐なにしてる?』



『今日はレッスンと撮影だけだから同じくらいに終わるよ』



朔はそれを聞いてじゃあ夜はお祝いしようねなんていう。
私ははてなを頭に浮かべていてそれを見た朔は、

『ほら、1年記念日。理佐が欲しいっていうから。』


どうやら朔は私と出会った日を記念日にしたらしく毎月14日は、理佐の日だからと付け加える。


『ありがとう。』


『ううん。どこか外行くでもいいし、家でお祝いする?』



朔は私を抱きしめながら言う。
可愛いなあ。好きだなあって朔の首に噛み付いてみる。



『っい、ちょっとー。』


白い首筋が少し赤くなって、朔に怒られる。


『ごめんごめん。買い物いって家で料理したい。』


今日は朔とイチャイチャしよう。そう思って家がいいと伝える。


『わかった。じゃあどこかで待ち合わせして買い物ね』


『うん。』


そう言って朔は私を見るから、私はその薄い唇に口付けた。





-






撮影が終わって、朔との待ち合わせ場所に急いだ。

珍しく朔は駅前を指定するものだから、私はあんまり気乗りはしないけど、マスクに帽子という如何にもな変装をしてそこにたどり着く。



少し遅れちゃったな。


携帯を見ると15分前にはもうついたというメッセージがきていて、周りを見渡した。


そろそろ帰宅ラッシュという山手線のその駅は、人がごった返していて簡単にも見つけられそうになくて。


これじゃ無理、、やな予感がして
私は電話を手に取りつつ、周りを歩いた。

その予感は的中で10mほど先で



-え、やばくない?-

-超可愛い。顔ちっちゃ-

-これから予定あるんですか?-


そう言いながら2人の男の人が女の子を囲んでいる。


男は腰を掴んで女の子を抱き寄せていて、女の子は嫌がってることが遠くからでもわかった。


周りの通行人もそれを見て見ぬ振り、、というかそれをチラチラ見る人、盗撮してる人も目につく。

そして、近寄ってそれが朔だと気づいた頃には私は、我を忘れて、男の間に入って朔の腕を奪って走り出していた。




朔は無防備すぎる。
何も変装をしないでこんなとこに来ていることもだし、第1に可愛いんだから、もっと警戒して欲しい。





『理佐、理佐ってば!』


『あ。』


気づけば地上出口を出て人気が少ないところまで来ていた。
朔は私に掴まれた腕をさすりながら、痛そうな顔をする。けれど、私はあの男の人と、目の前で平然とこっちを向く朔にイライラしてしまって。


『被って。』

『え、うん。』


そう言って朔に被っていたキャップを被せる。


『早くいくよ』


『……ごめん理佐』


『……。』




はあ。もう。なんであんな知らない人に朔を触られなきゃいけないんだ。朔も朔でもっと逃げられたじゃん。


そう思うとやっぱり嫌な気分にしかならなくて、隣を黙って歩く朔に大丈夫だった?という一言さえかけられなかった。










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