SS.

□映画鑑賞
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『やっぱり嫌かも。』


『理佐が見たいって言ったんじゃん。』


『んーだけど。』


朔はチケットを渡してスクリーンに向かう。


今日は仕事が終わって朔と、朔の主演映画を見に来た。

最近朔は舞台挨拶とか取材、番宣で忙しそうで、公開したその映画も、かなり高評価を受けているようで、当の本人は少し恥ずかしそうにワイドショーに映ってた。



『けど理佐に見られるの気まずすぎる。』

『それどういう意味。』

『だってさー、、、』


朔の言いたいことはわかる。
私が朔とイケメンな俳優のイチャついてるシーンがいやだと伝えたことがあるし、朔もそういうのを見られるのは恥ずかしいらしい。



『頑張ってたの知ってるから見たかったの。』

『んー。怒るのはなしだよ?』

『それは、、頑張る。』


私だって朔が自分じゃない人とキスするのは嫌だ。けれど、朔を見てみたいという気持ちが先行して、遅かれ早かれ見てしまうなら一緒に見たいと思った。





-





『理佐ー?』

『………。』

『ほら。行こ?もうお客さんみんないなくなっちゃったから。』

『うん。』



映画が終わって、

率直にいって、

ショックが大きすぎた。




朔が手を繋ぐところ
キスするところ
泣いちゃうところ
ベッドで軽くそういう雰囲気になるところ


全部既視感があるのに

相手は私じゃなくて。



朔は眉をさげて、私の手を引っ張っていく。映画は原作の少女漫画よりも面白かった。朔も演技が上手くて映画が評価されてる意味もわかった。

だから余計に、悲しい。



『理佐、これからどうする?』

『……帰る。』

『うん。』


どこか軽く食べて帰ろっかと言っていたけど、朔はさっとタクシーを拾ってくれる。そしてギュッと手を握ってて、気まぐれなくせに、こういう時だけはちゃんとしてるとこはなんだか悔しい。





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