CP.

□バレンタインのお返し
1ページ/2ページ

Risa side



『愛佳?大丈夫?』


『りっちゃん……』


『今日あと1部だけだからがんばろ?そしたら一緒に帰ろ?ね?』


『んーーもうむりー。ほんとむり。』


『ほら、チョコあげるから。あと来る人全部私だと思って』


『これがバレンタインのお返し?やだ。受取拒否する。』



愛佳は最近情緒不安定。

情緒というか、ひとの怖さに怯えてる。

特に握手会は、それがひどい。



仕事だから、
普段少し近づきたくないなと思う人にも笑顔で対応するのが当たり前と言われるけど。


ただ暴言を吐きに来たり、

わざと汚い手で握手をしに来たり、

説教をしにきたり、

名前を覚えていないと怒る人がいたり。



中高生とか若い子に向かって取る態度なのかなと思うことは多々ある。



そして愛佳が一層ファンとの距離を気にし始めたのがストーカーみたいなことをされた時からで。


ラジオの帰り、イベント帰りを待ち伏せされては、カメラで撮られて家まで探り当てられた。





-渡邊さんこれで終わりです締めます-


そうスタッフに声をかけられ今日の握手会が終わったことに気づく。
他のメンバーもチラホラ終わりが出ていて、愛佳のレーンを見るとあと数名残ってた。




並んでみるかあ。
そう思いついて、スタッフさんに申し出て愛佳の列に並ぶ。


ファンからの目線は痛いけど、まあね、今日のご褒美に愛佳と握手してもいいでしょうと。言いたい。




『こんにちはー』


『っえ………りっちゃん』


『ほらー私で最後だよ。』


『ううぅぅ、、』


愛佳は急にポロポロと涙を流す


『もー泣かないで』


よしよしと頭を撫でると余計に涙が頬を伝っていく。

愛佳は机から出てきて、私の胸で号泣し始める。スタッフさんもえ、どうしたの?なんて焦り始めて私は苦い顔をして謝るそぶりを見せる。


ほんと頑張ったよ。
私のところに来てくれる愛佳のファンの人も今日の愛佳は頑張ってたって言ってたし。ちゃんと届く人にはその努力が届いてる。

無言で背中をさすりながら、控室に戻ろうと足を進める。







『理佐、愛佳を泣かせないで』


『へ?ってあかねん。おつかれ。』


『うんおつかれ。』


あかねんは私の胸で泣く愛佳の頭をぽんぽんと叩いて、頑張ったねの一言だけかけてその場を後にする。


なんだかんだあかねんはいつもメンバーを見てて、軍曹健在だなって思わされる。




『愛佳?』


『なあに?』


『うちに住めば?』


『え?』


『1人にさせたくないし、バレンタインデーのお返し。今日合鍵持ってきたから。』



愛佳は震えてて。
あーどうせ変に遠慮とかするんだろうなとすぐ理解できた。



『あのね、私が一緒にいたいと思ってて言ってるの。私のわがままに付き合ってよ。』


『……いいの?私重いよ?』


『何を今更。』


『すぐ泣いちゃうよ?』


『泣き顔も可愛いしタイプだから。』



そう言うとまた愛佳はわんわん泣き始めて、あ、これは完全に私が泣かせたなと、笑ってしまった。



end

→おまけ
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ