SS.

□わがまま
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Risa side




今日はモデルのお仕事の日で朔と一日中一緒だった。

付き合い始めてから、モデル一筋の朔と半同棲し始めてから少しずつだけど、生活してく上で衣食住に仕事を考えるようになった。

普段何にもしないように見えて、鏡の前で体と向き合う姿に私は最初は呆然とした。そして、理佐もここ来てと、たまにストレッチを手伝わされるときも朔のストイックさには驚かされる。




だからこそ表紙を飾る朔にはまだまだ敵わなくて、同じ撮影の日は自分の出来なさに悲しくなる。



-じゃあ今日は彼氏と春デートっていうテーマなんでやわらかい顔お願いします。-


-お、いいよー、はい。笑ってーはい。まじめーはい。微笑んでーはい。怒ってーはい。悩んでーはい。よーし!おっけ!朔ちゃん完璧。-


目の前では朔の撮影が繰り広げられてて、うっとりとする表情やキャハと笑う顔、まじめな顔全部を1分程のうちに取り終えてる。



やっぱりすごい。

家でぐーたらするあの姿とは別人でそこにはモデルの朔がいた。



-はい!つぎー理佐。-


そうして私の名前が呼ばれる。カメラマンさんはカメラ交換しつつ、準備をする。




すれ違いざまに朔は私の元で耳打ちをする。


『微笑む表情は朝のちゅーしたあとの顔だよ?』


『な、何いってんの。』


『ふふ。いま理佐のこと思い出してポージングしたらすんなりオッケーでたから。』


そう言って朔はにこにことフィッティングルームに行った。
私は顔が真っ赤になってないか不安になりつつも、緊張をほぐしてくれた朔に感謝した。




-理佐ー!今日いいじゃん!可愛い。はい、笑って。うん。ちょっと怒って?おーいいよー。よしじゃあ好きな子見つめる感じで目線ちょうだいー。お!いいね。オッケー!-




私も撮影はすんなり終わって、写真チェックをみんなでする。朔も私の写真を見て微笑んでるし。多分うまくいった。




そして、次は朔とペア撮影。
この前の出来ない自分がよみがえる。
朔は服の着まわしについて真剣に編集者さんに聞いてるし。


-じゃあ次、親友と仲良しデートの設定だから、2人目線合わせたりちょっと抱きついたりしてみてね-


『はーい。じゃ理佐よろしくね』

朔はカラッとした笑いで私を見た。すでにシャッターは切られていて、どんどん朔に引っ張られるまま私は表情を変えていった。

そしていつも私がしてるように、朔に抱きしめられて、あ。キスされちゃう。そう思った瞬間、バチっと照明が光る。



『ふふ。理佐いま本気の顔した』

『うるさ、い。』


ちゅ


『え、り、りさ?』


なんだか余裕のある朔にむかついて、私はほっぺに口付けた。



-ほらーー朔ちゃん、だらしない顔しない笑-


呆然とする朔はそのまま写真に収められて大笑いするカメラマンさんにいじられてる。




-






『理佐。今日のなに。』

『えー?いつものお返し』

帰りの車で朔はぶーっとほっぺを膨らませてこっちを見てくる。

何しても可愛いからなんとでも言えと思う。


『楽しかった。』

『ん?』


朔は打って変わって楽しかったと言ってくれる。

『理佐との撮影。』

『うん。』

『しかも、データでもらったの。』

朔はそう言って携帯を見せてくれる。

そこには私が朔にキスをしたショットもあって、私の好きって気持ちが溢れてるように見えた。



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