SS.
□風邪っぴき
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your side
まだ少しひんやりする中での夏物の撮影が続いて風邪を引いた。家に帰っても理佐はいなくて、寝付けない日が続いた。
『朔寝よ。』
メイクだけ落としたという理佐はバッチリマスクもして私のベッドに入って来た。
私はすぐに理佐の腕に包まれる。
そして大好きな理佐の香りに、安心する。
『理佐。ごめんね。会いたいって言って。』
『んーん。』
理佐のことだから、私が体調を崩したと知ったらすごく心配するのは目に見えてて、会いたいなんて言ったから、急いでその通りに帰って来てくれたんだろう。
私はギュッと理佐の服を掴んで体を寄せた。
『朔 寂しかったの?』
『別にそういうんじゃない。』
『へえ。私は寂しくて朔に早く会いたかったけど。』
理佐は私の頭を撫でて、私の嘘を軽く見透す。本当なら、もっと理佐に触れたい日だった。毎日一緒にいて、3.4日会えないだけで、寂しくなっちゃうとは思わなかった。
けど、絶対理佐は、そうはさせてくれないから。体調を崩す私を看病してくれてもことごとく、普段の甘い時間は過ごさせてくれない。
『明日朝ごはん食べたい。作って?』
『うん。なにがいい?』
『和食』
私は甘えたくなってお願いをする。
理佐は目を細めてこっちを向くから、きっと明日の朝には美味しいご飯が食べられる。
『わかった。じゃあ、ちゃんと寝て治そうね。朔細いんだから人より免疫力低そうだし。』
理佐はそう言って私の身体を撫でる。
そしてお腹あたりで止まって私の薄さを確認する。
『もしかしてちゃんと食べてないでしょ?2.3日』
『……。』
理佐にはなんでもバレてしまう。
過度な食事制限だと一度怒られたことがあるけれど、食事制限じゃなくて、ただ理佐がいなくてご飯を食べることに重きを置いてなかっただけなんだけど。
『朔、お願いだからちゃんと食べて?心配するじゃん。』
『うん。気をつける。』
『はあーもう。倒れるよ。本当に。』
理佐は本当に困った声を出すから、
なんだか面白い。
この人は自分のことより私のことの方が心配なんじゃないかと思う時が多々ある。
『倒れても理佐がすぐ助けてくれそうだよね』
『あのね。朔』
理佐の声が真面目な感じになるから、あ、また怒られると思って。
マスクをする理佐に上からちゅっとキスをして布団に潜った。
『もー。』
『ふふ。おやすみ。寝まーす。』
絶対理佐は照れてるけど、私は明日のご飯のために寝るんだ。
そしてギュッと目を閉じて、
ぽんぽんと心地よいリズムを刻みながら私を眠りに誘ってくれる理佐の中で意識を手放した。
end