SS.
□記念日
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your side
『今日なにつくる、、?』
『ロールキャベツ。』
『いいね。』
『ん。』
早く仕事が終わって一人で買い物をしていた。今日は、理佐と1年記念だし、何かプレゼントでもしよう。そう思って。
歩くのも面倒で、少し早いけど待ち合わせ場所に向かった。そしたら、ずっと後ろつけられてるなあとは思っていたけれどまさか声をかけられるとは思わなくて、男の人たちに囲まれた。
そこから理佐はずっと不機嫌で、ショッピングも中止。そのままいつもの近くのスーパーまでタクシーに乗って買い物に行った。
カゴを持つ理佐はどんどん食材を入れていく。私はただ理佐の服の裾を握ってついていくしかなかった。
-
『ただいまー。』
『朔先にお風呂入っておいで』
『……うん。』
はー。なんであんなに不機嫌?
やっぱりまたリスク管理できてないとかマネージャーさんみたいなことを言うのだろうか。
そりゃすっごく嫌だったけど、
理佐にあんなに不機嫌になられるのもすんなり納得はできなくて。
会った瞬間すごく嬉しかった。けれどそのことも真顔の理佐には伝えることはできなかった。
いつもより長くお風呂に入ってあがるともうご飯はできていた。
『食べよ』
『うん。あ、そのまえにこれ。』
私はひとまず理佐に買ってきたプレゼントを渡す。一応ちゃんと選んだし、今日渡さないと意味がないし。
キッチンに立つ理佐は驚きながら、硬い笑顔でありがとうという。
私は、あ、またこの顔と思って少しだけ安心した。
理佐は頑固。基本は優しいから言い合いになったりしないけど、部屋が汚いと注意もされるし、洗濯を出し忘れるとすぐに叱られる。それで、なんでそんな怒るの怖いというといつも、今の顔でごめんという。
この顔の時は理佐は私のことを考えてる時で、すぐに仲直りできる証。
『理佐、怒ってる?』
『んーん。』
『怒ってるじゃん。』
『別に朔のせいじゃないけど、もう少し気をつけてよ。心配する。』
隣に立つ理佐は目も合わせず少し言いづらそうに言う
怒ったりしたあといつも元に戻るタイミングを見失う理佐に私はもう慣れっこで。
というかそれほど理佐を何度もムッとさせてるってことなんだけど。
そういう時はなんとなく私から謝ることにしてる。
『ごめんね。』
『私も不機嫌になってごめん。あと、、これもありがとう。』
理佐は大事そうにプレゼントを抱えて眉を下げる。
その姿はやっぱり可愛いくて、私も嬉しくなってしまう。
でも、私は聞きたいことがあって。
『ねえ、私がナンパされてるのやだった?』
そう。すごく嫌そうな顔をしていたからその本心を聞いてもバチは当たらないでしょ
『…朔。』
『ん?なあに』
『うざい』
理佐はこっちを睨んでて、私は笑ってしまた。
『ほら、教えてよ』
そう言っても理佐は絶対言わないと口をつぐむ。
『私はすごいやだけどなあ。理佐がナンパされてたら。超嫌。』
理佐を見ながらそう伝えてみる。
すると分かりやすく隣の子は顔を歪めた。
『もう。』
『ふふ、なに。』
『朔ってずるい。』
そう言って理佐は私に近づく。
『なに。』
『1回抱きしめさせて。』
そういうと理佐は私が何か発する前にギュッとハグしてくれる。だから私は背中に手を回してもっと力を込めた。
『……理佐?』
『………すっごく嫌だった。』
『ん?』
『朔可愛いし、いつも心配なのに、全然本人わかってくれないから、すごく嫌。』
理佐はいじけたように呟く。
『男の人に囲まれてるの、朔じゃなかったらなって思ったのに朔ですごい焦ったしイライラしたから、いい加減私の気持ち知って欲しい』
茶化そうと思ってたのに理佐は本心をつらつらと述べるから、私はなにも言えなくなって。
顔を離されて、
近距離で見つめられて、
あ、キスされる
そんなことを思った矢先、
『あと、、、記念日なんだから、こんな風になりたくなかった。』
と言われてしまって、
『ちょっと!朔大丈夫?』
私は床にへたり込んでしまった。
理佐は驚いてしゃがんでくれようとするけど
私はきゅんとしてしまって
すぐには動けなくて。
『ずるいの、、理佐じゃん。』
そういうと、上から
『朔がいけないんだよ』
なんて聞こえて、
私は理佐には敵わないらしい。
-
『ん!』
『はいはい。ほんと大丈夫?』
そうやって結局私を立たせようとしてくれる理佐はもう固い笑顔ではなくて、なんならにっこりしていた。
だから
くそう。という思いを込めて
私は私を立たせようとする理佐を
引っ張って座り込んで唇を奪ってみた
end