俺らの謎解き探偵部
□〜日常の異変〜
1ページ/5ページ
僕は、狭い路地裏にいた。遠くから酔った
大人たちが騒いでいるような騒音が聞こえる。
近くに焼き鳥屋でもあるのだろうか。
甘くそれでいて香ばしい香りが漂ってくる。
((あぁ、腹が減ったなあ。焼き鳥でも買って帰ろうかなぁ。))
今日は、塾の宿題を忘れ、居残りをさせられ
てしまった。もう、あたりは暗闇でひと気の
姿も少なく、いるとすれば顔を赤らめふらふ
らと歩く酔っ払いたちだけ。もうすぐ10時
になろうとしている。
((早く買って帰ろう))
僕は、足早に焼き鳥の匂いのする方に向かった。
ドン!! バタン!!!
「や、やめて!!」
「いーじゃねーかよぉ!」
聞き覚えにある声が路地裏に響いた。甘くさ
わやかで、それでいてすごくやさしい
声・・・。
((怜だ!こんな所で何をしているんだ!))
僕は、怜の声がした方へ体を向けた。そこは薄暗くなにか、嫌な雰囲気が漂っていた。
しかし、今はそんな事を気にしている場合ではない。
あの暗闇の中からは、集団のようなたくさんの声が聞こえてくる。
僕は、すくむ足を何とか動かし暗闇へと近づいていった。
物陰に隠れながら、恐る恐る暗闇を覗き込む・・・。
「は、離して!!」
そこにいたのは、紛れもなく怜だった。怜はおびえた表情をしている。
いつも、明るい笑顔で話しかけてくる表情とは真逆だ。
全体を見回すと、怜の周りには何人もの男子が怜を一定の間をあけて囲んでいる。皆ふらふらしていて顔が赤い。酒を飲んだみたいに思える。
男子たちは、皆同じ学らんをきていた。
胸元には、佐賀原学園のシンボルマークが・・・・。
((同じ高校の人だ・・))
何回見てもそれは、野原に咲く一輪の花をイメージして作られたバッジ。
((どうして・・。))
集団の中には怜がいる。
いや、怜以外にももう一人がっちりした腕で怜の腕をつかんでいる男がいる。
その男の胸元にも花のバッジかついていた。
「何でそう拒むんだよぉ」
僕は、昔から耳は抜群にいい。
今の声は・・・。
同じ学年、同じクラス1年1組の大山瑛(おおやまあきら)だ。
大山は、かなり体格がよく学校では成績優秀、友達が多く規則はしっかり守りまたみんなとやさしく接しているので先生の関心が高い。中学ではかなりもてていたらしい。
・・・。猫かぶっていたのか。
僕は、大山とは班で一緒になったことぐらいしか関わりはないが、ひそかに憧れを抱いていた。
僕は、裏切られたような感じがして怒りがこみ上げてきた。
「どうして怜ちゃんは、あんなクソで貧弱な奴と付き合ってんだぁ?」
瑛は、必死に手をほどこうともがいている怜に少しずつ顔を近づけていく。瑛は、相当酒を飲んだらしく2人を囲んでいる男子たちより、何倍も顔が赤い。
「そ、そんなの好きだからに決まってるでしょ!!」
怜は、必死にもがきながら瑛の質問に答えた。
しかし、その努力もむなしく瑛の赤い顔はどんどん怜の腕に近づいていく。