たんぺん

□蒼い世界
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私の前世は水かもしれないと言った。
そうしたら君は吹き出しながら笑って「急にどうしたの?」と言った。君はまだ目尻に涙を浮かべながら笑っていたけれどそれを無視して私は言葉を続けた。


「私は小さい頃からずっと、綺麗な水…例えば物凄く澄んだ水を見ると例え海だろうが飲めない水だろうがお構いなしに飲み干したくなるの。
何でかはわからないけれど・・・。
時には入水自殺もしてもいいと思っているわ。」
「それはまたおかしな病気だね。」
「本当ね。自分でも笑ってしまうわ。」


君は昔僕にそう言った。
僕はあの時君に理解何かできなくて、面白くてつい大きな口を開けて笑ってしまった。


だけど今なら君の気持ちが少しは理解出来たと思うよ。眼下に広がるコバルトグリーンともコバルトブルーとも形容し難い青緑色の世界。
儚く通り抜けていくその世界に胸の奥が苦しくなった。


僕は君の好きな水で、水と共に、水の世界で命を落とすのだろう。
独りでどこかへ逝くのは不安だったけれど、君がそばに居てくれるような気がして不安も恐怖も今は感じられない。


でも、君は僕のことをなんでも見通してしまうのだろうから僕が水の世界逝ってしまったと気づいてしまうのだろう。
そうなった時に僕は君が僕を追いかけて来ないかとても不安なんだ。
だからもう少ししたら僕は君が自ら命を落としてしまうことないように君を見守っていようと思うよ。
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