たんぺん

□きっかけ
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たまに組分け帽子が間違えてしまったのではないかと疑ってしまう位この寮に異端者が入ってくることがある。
例えば血統を気にしない、誰とでも分け隔てなく話すとかそんな人。
そう、全ては彼女、なまえのことだ。
彼女はとても狡猾とは思えない。
明るくて何時も笑っているし、寮や血統なんて関係なく誰とでも仲良くする。
天真爛漫という言葉が彼女にはとてもよく似合うだろう。
もし、それすらも計算の内にあるのなら名役者だと僕は感心してしまうだろう。

そんな彼女はこの寮の人間にとってみれば異端者であり、正しい者ではないのだろうから周りからは避けられ、影で色々と言われていた。


「レギュラスくーん!
レギュラスくーん!!」
遠くから駆けてくる足音と共に僕の名前を呼ぶ声が近付いてくる。
振り返って見れば例のその“彼女”―なまえがいた。
「レギュラス君、さっきね、あなたのお兄さんとお話ししたの。
すごく面白くていい人だったよ!
始めはすごく警戒されてたんだけど、私あの悪戯仕掛人のファンでサインしてくださいって言ったら急に大笑いされちゃって。
お前があのスリザリンの異端児かって。
それでね―…」
目の前で目をキラキラとさせながら話すコイツ―…もといなまえは僕に喧嘩を売っているのだろうか?
僕は一つゴホンと咳払いをしてから満面の笑みで
「金輪際僕の目の前で兄さんの話をしないでくれるかな?」
と言った。
すると彼女は頭にクエスチョンマークを浮かべ僕に釣られて笑いながら
「何で??」
と尋ねてきた。
「お兄さんと喧嘩でもした?」
僕は彼女のその言葉に僕の中で何かがフッと切れたのを感じながら、あのクソ兄貴…イヤ、あのバカに対する怒りを彼女にぶちまけた。
「だってこの前のクリスマスの時、一番最後に食べようと思ってとっておいたケーキのイチゴを勝手に兄さんが食べちゃったんだよ!!
楽しみにしてたのに!それにあのバカ兄貴、チキンの食べ終わった骨をわざわざ僕の皿に置いてくるんだ!!」
「あっはっは!!」
彼女の大爆笑する声が聞こえた。
僕はそのことに少しばかりムッっときてしまった。
「ごめん、ごめん。だって普段のレギュラス君と全然キャラが違うんだもん!
思わず笑っちゃったよ!でも、本当はそういう性格だったんだね!!」
「…本当はあの場で呪文をかけようとしたんだ。多分あともう少しで僕はアズカバン行きだっただろう…。
ギリギリで理性が働いてよかったよ。」
僕は落ち着きを払いつつそう続けた。
「ああ、何だか思い出したらイライラしてきた…。
・・・そうだ、あの時兄さんに出来なかった“仕返し”してくるよ。」


本人は無自覚かもしれないが最後の一言(特に“仕返し”ところ)でこれまでに見たことない位さわやかな笑顔…もとい黒い笑みを浮かべながら楽しそうに彼は去って行った。

ただ呆然となまえは一言呟いた。
「ダンブルドアせんせー、ここにも一人悪戯仕掛け人がいますよー。」
そしてなまえもまた他寮の友人のいる所へと向かった。

歩きながらなまえは思った。
なんだかんだいって兄弟ってよくにるんだな、と。
そして先ほどシリウスに別れ際に言われた一言を思い出した。
『アイツさ、見た目大人しそうだけど案外アツイ奴なんだよ。話してみたら分かるから今度話してみな!』

一方当のレギュラスは兄を探しながら思った。
(彼女と話す機会をくれたのは兄さんだし、巨大落とし穴に突き落とす位にしとこう。)

━━━━
きっと多分黒兄弟もこういう仲の良い時代があったんじゃないかぁ・・・
というよりもあって欲しいと願って。
 

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