たんぺん
□紅
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紅い瞳が対峙する。
妙に冷えた壁の温度が背中に伝わり肌が粟立った。
「死ぬのは怖いか?」
目の前の紅蓮の瞳をした男が尋ねる。
自分が数段有利な状況を至極愉しむかのように笑っている。
「…いいえ、全く。」
目の前の男は少し意表をつかれたような顔をした。
そしてまた更に楽しそうに笑って言った。
それは虚勢か、と。
「違う。」
端的に答えた。
「…では、何故だ?」
「たかがこの人間と人間が作り上げた産物と動物しか無いこの地球になんで何十年も執着しなきゃならないのよ?
むしろ執着しすぎてるあなたがアタシからしてみればおかしいのよ。
別に良いものも、良いことも何もないじゃない。
人間のまま永遠に生き続けなきゃならないなんてそれこそまさに生き地獄よ。」
思ったままを伝えた。
そうしたら今度こそまさしくハトが豆鉄砲を食らったような顔をした。
それから、また笑いながら、
「…ほう、興味深いな。」
そう言って去って行った。
「…その笑顔、不意打ち過ぎる...。」
君に共鳴する、例えその先が茨道だったとしても―