novel.1
□本編
1ページ/7ページ
プロローグ
この世界は理不尽すぎる
幸せそうな笑顔も声も、
みててムカつく。
ガキから年寄りまで…。
俺は今まで、心から笑ったことなんてない。いや、できなかった。
泣くことも笑うことも
許されない場所で育ったから。
「桜…」
今の季節は春。桜が吹雪のように散る。手のひらにのった桜の花びらを、手で握り潰す。
「紫音…―。」
誰かの名を呼ぶ黒髪の少年の姿は、どこか寂しそうで…
今にも泣きそうだった。
その日の月明かりは、少年を優しく包み込んでいた。