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□料理
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部屋ではお互い干渉せずに荷物整理をしていた。
必要な家具類はすべてフィフスセクターが用意してくれていたらしい。
部屋もお互い1つずつは確保できる。
生活にかかる費用はフィフスセクターから金が送られてくる。
「隼総、もうすぐ夕飯にするけど、何がいい?」
「お前料理できんのか?」
「好みに合うかは分からないけど」
「…何でもいい」
コンビニ弁当を食べると思っていた俺は呆然とした。
買い物に行ってくると言ってななしのは出て行った。
30分くらいすると、玄関のドアが開いた音がして、迎えに行ってみればデカいビニール袋を抱えたななしのの姿があった。
「お前、何作る気だよ」
「今日の夕飯と明日分の材料」
今から作るからもう少し待ってて、と言われてから40分。
俺の前にはカレーがあった。
「とりあえず、何が好きか分からないから」
「あぁ」
「…どう?」
「悪くねえ」
「そっか」
「あの、」
「何だよ」
「嫌だったらいいんだけど、」
「はっきり言えよ」
ななしのは目を泳がせていた。
いつもの淡々とした言葉じゃなくて、言い淀んでる。
「血を、吸わせてください」
出てきた言葉は俺を混乱させるには十分すぎるくらいだった。
血を、吸う?吸血鬼みたいじゃねえか。
からかう、ましてや性質の悪い冗談なんかを交わす仲でもない。
ってことはコイツは本気で言ってるってことになる。
「どういうことだよ」
「私は吸血鬼なの」