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□訳の分からない君が
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また捕まってしまった。
葵ちゃんに手を引っ張られてどんどんサッカー棟に近づいていく。
振り払う訳にもいかなくて、そのまま歩きながら周りを見ていたら狩屋と目が合った。
と思ったらすぐに逸らされた。
そういえば、昼休みが終わってからずっと狩屋に避けられていた気がする。
狩屋から何か言われると思って教室に帰ってきた私は、予想に反して目も合わせず何も言ってこない狩屋を不思議に思っていた。
私が立ち止まると、葵ちゃんがどうしたの?と訊いてきた。

「狩屋くんに渡さなきゃいけないものあるんだ。後で狩屋くんと部室行くから、先に行っていいよ」

絶対来てね、と念を押された。あれ、墓穴を掘った気がする。
とりあえず狩屋に向かって歩く。

「狩屋」
「なんだよ」

周りに誰もいないのを確認して呼び止めると、いつもの狩屋だった。
ただいつもより若干声が低い気がする。

「避けてる?」
「何を」
「私を」

しらばっくれようとしても無駄だと目で訴えると、舌打ちが聞こえた。
追い打ちをかけようと口を開きかけたけれど、それは狩屋が突然走って行ってしまってできなかった。
これで狩屋と一緒にサッカー棟へ行く、という約束は叶わなくなった。
別に私には関係ないことなのだけれど、少しだけ気になった。



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