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□再会
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「神童、あの子知り合いか?」

天河原との対戦のあと、雷門中に戻ってきた俺たちは着替えも終わり、霧野と帰宅している途中だった。
駅前に俺たちを凝視する女の子が一人。
しかも、天河原中の制服で。

「霧野はどうなんだ」
「選手以外の天河原の生徒とは喋ってない」

マネージャーともな、と付け加えて答えが返ってきた。
そうこうしている内にずんずんと彼女が近づいてきた。

(なんだ、嫌がらせか?)
(こんな堂々とやらないだろう。ましてフィフスセクターなら不祥事を起こしたくないはずだ。)

案の定俺たちの前で立ち止まった彼女は俺の腕を引っ張った。
その力は思ったよりも強くて咄嗟に足が前に出た。
彼女はそのまま俺だけを引っ張って歩いていこうとする。

「待て!神童をどこへ連れて行くつもりだ!」
「関係ない」
「フィフスセクターの指示なのか!?」
「関係ない」

どうやら彼女は個人的に俺と話したいようだ。
嫌がらせに来たわけでもないのなら、何の用があるのか。
霧野はまだ彼女に質問をぶつけていたが、俺が首を横に振ると、彼女を睨みつけながら帰っていった。
彼女は路地裏までやってくると立ち止まった。

「俺に何か用か」
「……」
「俺を説得させようと思っても無駄だ。俺たちは革命を続けるし、変えてみせる!」
「……タクト」
「は?」

不意に名前を呼ばれた。次の瞬間、彼女の頭が自分の首の辺りにあった。
なぜか動けないままでいると、小さな痛みが走った。

「タクトだ、本当に、逢えた」
「俺を、知っているのか?」
「私覚えてたよ。みんなはもう死んじゃったけど、私は、いるよ」

まるで数十年ぶりに再会したかのように彼女は俺に話しかける。
もちろん、彼女とは初対面だ。そのはずなのに、彼女は俺を知っている。
証拠はなくても、その確信だけはあった。

「もし昔会っていたら悪いが、俺は君を知らない」
「当然。神童と私は初対面だから」

さっきよりも落ち着いた彼女は、今何と言った?
“神童”と俺を呼んだ。じゃあさっきの“タクト”は誰だ?
分からないことだらけのまま、彼女はまたねと去っていった。



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