long2

□訳も無く全身が沸き立つ
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いつもの時間に登校すると、私の教室から2つ離れた教室が騒がしい。
真っ直ぐ自分の教室に向かっていた足をそちらの方に向けて問題の教室を覗く。
騒いでいるのは全員女子。
運良く知り合いを近くに見つけたので尋ねてみる。

「ねぇ、この人だかりは何?」
「神童君に彼女が出来たんだって!」
「神童?…あぁ、あの人か」
「いやー、でも美男美女のカップルだから悔しいけどお似合いだね!」
「ふーん」

私は神童と一言も話したことがないから何とも言えない。
騒がしいのだけは勘弁してほしいけれど。

「ななしのさん!」

聞き覚えの無い声が自分の教室へ向かう私を呼ぶ。
一応振り向いてみると噂の神童君だった。

「私に何か用ですか?」
「生徒手帳、落ちていたんだ」

差し出された生徒手帳を受け取って確認。
確かに私の名前が書いてある。
生徒手帳なんてどこに入れたかも忘れていた。

「ありがとうございます」
「いや、お礼を言われるほどの事じゃない」

それじゃあ、と彼は言って教室に戻ろうとした時、ふと思い出した。

「あ、神童君、おめでとう」

きょとんとした顔の神童君は何の事か分からないらしい。
彼女の事だと伝えると、彼ははにかんで笑った。
その顔を見た瞬間、心臓が大きく脈打って私の体を駆け巡った。



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