novel

□あなたが嫌いです 
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「なぁ、今から花宮の家行ってもえぇ?」

そんな電話が在ったのが午後10時。
普通の家庭なら断るんだろうが、生憎親の帰りは遅くまだ当分帰ってきそうにない。

適当に断ろうとも思ったが、断ろうにも、アイツは俺の親の帰りが遅いことを知って言っているのだから言い訳にならない。
だから結局うんと小さな声で頷く事しか出来なかった。



何故頷いてしまったんだ。
頷けばあの馬鹿が上機嫌で来ることくらい分かっていた筈なのに。

そんな事を考えているうちにピンポーンと来客を知らせる高くて少し間抜けな音。


誰が来るかなんて分かっていたからインターホンで確認もせずにドアを開ける。

「自分も鍵持ってんだから勝手に入ってこいよ。寒ぃんだよ」

いきなり可愛げの無い悪態をつく。
まぁ、男に可愛げがあったとしてもキモち悪いだけなのだけれど。

「そんなこと言わんでや。花宮に出迎えて欲しかったんやから」

と余裕のある返しと共に入ってきたアイツには外の寒さを纏ったまま俺を抱きしめる。

少し位戸惑った姿を見たかったと言うのに。


「おめぇ、抱き付くな、キモい。後、手冷たすぎ。触んな。」



やはり日中より大分気温が下がっているのだろう。

俺の左頬を撫でる今吉の手は氷のように冷たい。



温めてやろうかなんてらしくない事を考えたがコイツが勝手に来ると言ったのだ。俺には関係ない。

手の冷たさと抱きしめられている力から逃れようと身を捩る。

身長差は殆どない筈なのに何故か逃げれない。



「ちょ、さっきから花宮ひどいわ。ワシは只花宮に温めて貰おう思うただけなのに。ワシ泣くで?」

「勝手に泣いてろ。つか俺を暖とるのに使うなっ」


寒いなら部屋に入れば言おうと思ったがそんな事を言えば、何だかコイツの事だ。
入れるのを承諾していまうと言うことなねだから、何を言い出すか分からない。



身を捩って出来た隙間から肩口を押して腕の間からすり抜けてコイツを置いて部屋へ行く。



あ、ちょっと待ってやっ

なんて言いながら、慌てて追いかけて来る姿は何だか笑えて、聞こえて無いふりをして部屋に入る。



座るのは何時もの位置。
俺がベッドの上に座り、コイツはその下でベッドの縁に体重を預けて座る。








「あ、そうそう、今日青峰がな…」

「でな、そん時桜井が…」


俺が返事をしないのにコイツはずっと喋り続ける。

でも絶対に俺の方は向かない。
わざわざそんな話、聞く気もないから言葉はどんどん頭の中を通り過ぎていく。
それも話の内容は
バスケケの事ばかり。
自分の知らない世界。




おもしろくない。



ふと目線を下に下げると丁度バスケ雑誌。
普段は純情にバスケをしている奴らを見ればすかさず吐き気と嫌悪感が襲ってくるものだが、いつか部屋に来た時に今吉が勝手に置いて行ったものだった。
適当にページをめくるとそこには"桐皇"と言う二文字とチームメイトと笑う今吉の姿。




おもしろくない。




もういい。今日は俺の負け。

バサリと荒く雑誌を閉じる。


「で、今日は何しに来たんだよ。」

そう言うとコイツは今まで向けなかった顔をこちらに向けてくる。
その顔には満面の笑み。
その笑顔によって認めたはずの負けはやがて少しの苛立ちに変わる。

でも、コイツが何をしに来たのかを知らなければならない。

「そうやなあ…お喋り?」

コイツがお喋りとか…キモい。
だけどもうツッコむ気にもなれず溜め息が出る。


「ちげーよ。おめぇがそんなんで来るわけねぇだろ。本当の事言え。」


そう言うと細められていた目が少し開く。


「何って・・・。ホンマに分かってへんの?」

いやー。分かっとって知らんふりしとんのかと思っとたら・・・

何を言っているのか。
一人で何か言っているようだが生憎意味が理解できない。

「だからなんだっ「花宮、ちょっと目、閉じとき」

俺の言葉に重ねられた言葉とともに今吉の手が俺の目を覆う。
その手はさっきの氷のような冷たさとは違ってちゃんとひと肌に暖かい。


いきなりの事で対応が遅れたというのもあるが、なんだか抵抗するのも疲れて大人しくしておく。




しばらくすると首にひんやりとした感覚。
それと一緒にコイツの息が首に当たるものだから

「んっ」

と思わず声が出て、なんとなく羞恥心に襲われ顔の方に血が上って火照るのがわかる。





俺の目の上を覆っていた手が外されると目は開けていなくても部屋の明かりが入ってくる。

「もうええで。」

という声により開けた目から入ってきた光はさっきよりも比べ物にならないほど強烈で思わず眉間に皺が寄ってしまう。




「鏡見てみ?」

そう言われて差し出された手鏡を覗きこむ。
手鏡の中の俺の首には少し違和感のある重みと共にシンプルなシルバーのネックレスが映し出された。



「・・・なんだよこれ。」


よく見ると今吉の首にも同じものが付けられている。
今吉の首のそれを指して言うと


「何って・・・誕生日プレゼント?」



「はぁ?今日何日だと思って・・・。あ」


今日は1月12日。
確かに俺の誕生日だ。
今吉が此処に来たのも、
その理由を隠していたのもこれの為だったのかと少し呆れた。


「つか、なんかプレゼントにしては趣味悪くね?シンプルだけどなんか鎖みてぇ」


素直にありがとうなんて言える筈も、というより言うつもりがないから悪態を付いた。
でも、本当にそうなのだ。



「よぉ気が付いたな。これ、花宮繋いどく為の鎖。まぁ、指輪でもよかったけどこっちの方が束縛感あるやろ?」

確かにそうかもしれないがもっと他の理由がないのかと今日今吉が来て何回目か分からない溜め息を吐いた。


そんな俺には構わず今吉が俺のベッドに上がってくる。

「好きやで。あと、お誕生日おめでと」

抱きしめられた温もりと共に耳元でささやかれる言葉。
嬉しいなんて思わない。
好きもありがとうも言わない。

「うるせぇ・・・ばぁか」

真っ赤になっているだろう顔を隠すためにコイツの肩に顔を埋めた。


















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「つかなんで俺の誕生日知ってんだよ」



「なんでだと思う?」


「妖怪だから。」


「もうそれやめてっ!ワシでも言われ続けたら傷つくねんで」


「ふはっ・・・妖怪が傷つくとか」


「ほんま止めてって!!」





今吉先輩の膝の上でこういう会話しといて欲しいと切実に願う。


title Cock Ro:bin

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