番外編
□梵仏編-2
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いつもならこの時間。
のんびりとお茶を飲みながらシッダールタと二人、とりとめのない話でもしながらのんびりと過ごしているはずだった。
一体なんだというのだ、この状況は、と梵天は心の内でつぶやいた。
事は視察に出かけていた帝釈天が、数日ぶりに帰って来た事から始まった。
「ふふ、ホント帝釈天さんの話は面白いです」
「そうか? そりゃ良かった。おっと、そうだ! これシッダールタにお土産」
「わ、嬉しい! ありがとうございます!」
梵天の眼前には楽しそうに満面の笑みで返すシッダールタと、これまた嬉しそうな様子の帝釈天。
飾らない性格で世話好きな奴にシッダールタが懐くのはわかる。
それは仕方ないと思うが、目の前で仲睦まじい様子を見せつけられてしまうとさすがに腹立たしい。
「……なぜお前がいるんだ」
「報告しに……っていうのは建前で〜、ただ単にシッダールタに会いに」
「お前さっさと帰れ!」
不機嫌度が一気に上昇した梵天。
そんな梵天の苛々とした様子に気がついたのか、シッダールタが小さく首を傾げた。
「梵天さん、眉間にシワがよってますよ。最近忙しいようですし少し眠ったほうが……」
「大した事ありませんよ。お気になさらず」
「でもほら、ここ……」
近寄ってきたシッダールタの白い指が梵天の眉間を解す。
シッダールタに触れられただけで、ふっと気持ちが安らいだ。
梵天は覇王と呼ばれる自分がずいぶんと簡単になったものだなと苦笑すると、帝釈天と目が合い小さく笑われた。
「男の嫉妬は可愛くねーぞ、梵天」
「嫉妬? フン……お前相手にまさか」
まさにその通りだったが、癪に障るからわざと否定する。
そして帝釈天をひと睨みするが、平然と何か言いたげにニヤニヤといやらしい笑いを浮かべている。
ムキになって反論すれば帝釈天の思うつぼだ。
梵天は無言でシッダールタの背と膝裏に手を添えると抱き上げた。
「わっ! ちょっと梵天さん?」
急な展開に、慌てた様子でシッダールタが声を上げる。
「やはり休憩する事にします。付き合って下さい、シッダールタ」
「やっぱ嫉妬じゃねぇかよ」
楽しそうに笑う帝釈天をジロリと一瞥すると、シッダールタを横抱きにしたまま寝室へと入った。