番外編

□梵仏編-4
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「ん、」
 


シッダールタはふと目が覚めたが、まだ眠気が強くまた眠りに落ちようと頭の下に敷いていた枕に顔をすり寄せた。



「……?」



枕にしては堅く温かいその感覚はまるで肌のようで。



なんでそんな感触があるのか。



枕はどこにいったのか。



しばらく目を瞑ったまま考えていたシッダールタは一気に覚醒した。



「なっ……!」



がば、と上半身を起こすと、真っ先に隣で横たわる梵天が目に入った。



「まだ起きるには早い時間ですよ。まだ寝ているといい」



梵天は自身の腕のシッダールタが枕代わりにしていた部分をポンポンと叩いて、また横になるように促す。



いつから起きていたのだろう。
梵天の唇の端が可笑しそうに上がっている。



シッダールタが起きたせいで乱れたシーツから露わになった梵天の厚くたくましい胸板に、広い肩幅から伸びる筋肉質の腕。



互いに素肌で、その胸に寄り添いその腕を枕に寝ていただろう自分。



それではまるで蜜月の恋人同士のような光景ではないかと、シッダールタは頭を抱える。



梵天との関係はそんなに甘い物ではない。



愛情などあるはずもないのに。
 


「あなた、何をしてるんですか……」



恐る恐るシッダールタが口にすると、梵天は横に投げ出していた腕を引き戻して、少し乱れた漆黒の髪を掻き上げ身体を起こした。



「腕枕ですよ。今回に限った事ではなくいつもこうやって寝ているのですが」



「いつ、も……?」



狼狽えながら聞き返すと、梵天はフフっと笑った。



「貴方は達した後、私にしがみついたまま眠られるので」



「………」



嘘だ、と突っぱねることができなかった。



意識を手放すように眠る事は毎回の事だったから。



「目がすっかりと覚めてしまったようですね。でしたらまた付き合って頂くとしましょう。貴方の大切な方の為に、せいぜい可愛らしい声で鳴いて私を楽しませて下さい」



両手でシッダールタの頬を優しく覆って、その身体を寝台に押し倒しながら梵天はゆっくりと顔を近づけていく。



シッダールタは怒りとも悲しみともとれる表情で梵天を睨み付ける。



そんな視線を真っ向から受けながら、梵天は震えるシッダールタの唇を思う存分に貪るのだった。

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