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□帝釈天のひとりごと
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***長編『支配者』より***


●帝釈天のひとりごと● 

梵天のヤツ、シッダールタの事になるとホント子供っぽくて困るぜ。


女官からシッダールタに食事を運ぶ仕事を(無理やり)譲って貰ったのを、どこで聞いたのかオレに突っかかってきやがった。


自分より先に、目の覚めたシッダールタに会ったのが気に食わないらしい。


それにしても可愛かったなぁ、シッダールタ。


目に涙を溜めて、プルプル震える姿は小動物みたいでキュンッ☆っとしたし、食べさせてやってたらなんか庇護欲を掻き立てられて、弟がいたらこんなカンジかなって。


心がほんわかして、いい気分だった。


ま、梵天にとやかく言われんのも気にならないくらいの得役だったな。


ってか、裸で寝かせるってありえないだろ。
さすがにびっくりしたぜ。


……変態かアイツ!


女官の反対を押し切って、王自ら風呂に入れたって聞いた時は、さすがの俺も驚いた。


元『男』のシッダールタが女に風呂に入れられるってのも嫌だろうけど、梵天にってのも残念ながらスッゲー嫌がると思うぜ。


そういえば着替えを急いで用意しろって女官に言ってたっけ。


予定より早く連れて来たから、服の仕立てが間に合わなかったのか。


けど、それまではとりあえず何でもいいから着せといてやれよ。


やっぱり変態か!? 


その変態王は、攫ってきた夜から目覚めないシッダールタが心配で、2日も付きっ切りで看病してたんだけど、さすがに3日目の今日は文官に引きずられるように連れて行かれたから、今頃政務に追われているんだろう。


アイツがいなくなってから起きるなんて、よっぽど拒否られてんのなって思えて、ちょっと梵天に同情した。


だからシッダールタが起きたって事と、メシはオレ直々にちゃんと食わせてやったから安心しろって教えてやったらどつかれた。


オレが先にシッダールタと仲良くなって、笑顔を見たからってヤキモチか!?って言ったら憤然とした様子で部屋から出て行きやがった。


これから俺の部屋を朝まで人払いをしとけっていう言葉を残して。


シッダールタがいるのは梵天の部屋である。


朝までって……


シッダールタは起きたばかりなんだから無茶させんなよ。


梵天自身もここ三日、ろくに寝てないはず。


……お元気な事で。


更に梵天がシッダールタに嫌われるような予感がする。


好きな子をいじめるという、子供じみた愛情を示すしかない梵天の不器用さに、ただただ苦笑するしかない帝釈天なのであった。


だれか、アイツに恋愛指南してやってくれ……

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