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□帝釈天のひとりごと2
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***長編『支配者』より***
●帝釈天のひとりごとU●
あ〜、ダルい……
体調が悪いせいか、やたらと疲れる今日。
微熱があるのが梵天にバレて、強制的に帰らせられた。
薬師から薬を貰ったから、飲んで大人しく部屋で休もうと歩いていると、向こうから小さく手を振る姿が見えた。
「シッダールタ」
俺は慌てて駆け寄る。
「おまっ…何してんだよ、こんな所で」
「えっと、帝釈天さんが具合悪いって聞いて」
シッダールタは俺の顔を心配そうに覗き込んで来る。
こいつは梵天の大切な人で。
俺のかわいい弟…いや、妹みたいなヤツ。
癒し系で、ホント顔を見るだけでも癒される。
いや、それどころじゃない。
「一人か? 侍女はどうした?」
「だ、大丈夫だよ! この辺って人通り多いし!」
「バカ。おまえに何かあったら俺が梵天から怒られるんだからな」
「……ごめんなさい」
俺の言葉に、しゅんとするシッダールタ。
そんな姿さえ悶えてしまいそうなほど可愛い。
こういうのシスコンっつ〜の?
兄バカ末期だ。
こいつにゃ、どうしても甘くなっちまう。
「少しキツく言い過ぎちまったか。梵天がどうこうってより……オレが心配でしょうがねぇからよ」
シッダールタはオレを見上げて嬉しそうに笑った。
「ハイ、気を付けます」
シッダールタの笑顔に、具合が悪い事などわすれてしまう。
というか、すべて打ち消されたかのように、今は気分がいい。
「いい子だ」
よしよしと少し乱暴に頭を撫でてやる。
オレはどこでだって、誰にだって、うまく感情を隠せるのに。
シッダールタ相手だと、どうも素直に表に出てきてしまうんだ。
それほどに。
大切になってしまった存在。
妹のようにって思い込むしかない。
(ったく報われねーな、オレ)