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□女はつらいよ
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●女はつらいよ●
「う、ん……」
梵天とお茶の時間を過ごしていたシッダールタは、椅子に座ったままお腹を抱え込むように前のめりの姿勢をとった。
「どうしました? 体調が悪そうですね」
梵天は椅子から立ち上がると、シッダールタの側に跪いて顔を覗き込んだ。
「え? ……ええ、まぁ」
シッダールタの白い肌が、今日は青みがかって見える。
めずらしく歯切れの悪いシッダールタに梵天は目を険しくした。
「梵天様、シッダールタ様は月のものが……」
控えていた侍女のスジャータが口を開いたのだが、火が付いたように顔を真っ赤に染めたシッダールタに途中で遮られた。
「わーわーわーーー!」
梵天はシッダールタの突然の慌てふためく様子に目を丸くしたが、事情を察すると苦笑してそっとシッダールタの頭を撫でた。
「女性は大変ですね。辛いのなら私の事は気にしないで横になるといい」
シッダールタは女性の体のしくみというものは知識としては知っていたが、女性になって実際に経験してみるとこんなに不快な症状を毎月耐えているのかと世の女性を尊敬した。
「すみません、では遠慮なく……」
腹痛のみならず頭痛、腰痛、眠気、そして熱っぽさも感じる。
身体が女性になったからと言って、性格や習慣が急に変わるはずもなく、男性としての人生を歩んできたシッダールタは当初は自分に月のものが巡ってくるという事実を受け入れられず、出血している間は寝室に引きこもってみたりしたものだ。
「シッダールタ」
さり気なく差し出された梵天の手をつい取ると、そのまま寝室へと誘導された。
梵天は壊れやすい物のように、やさしくシッダールタを扱う。
その事に不快感を感じず、それどころかこの扱いが心地よいと感じてしまう。
だんだんと精神が肉体に影響されて思考が女々しくなってしまったのだろうかと、シッダールタは思わず身悶えそうになるのを必死に耐えるのだった。