拍手お礼SS

□執着
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●執着● 



ある日の極楽浄土。



「シッダールタ。いつまで話をしているつもりですか。私はもうお腹が空きましたから早く行きますよ」



それまで黙って、ブッダの帝釈天と弁財天を相手にした会話を聞いていた梵天が突然立ち上がった。



「は、はいっ! すみません帝釈天さん、弁財天さん……梵天さんを待たせてるので、この話はまた」



急ぎ足で梵天の元まで走り寄ると、まだ何か云い足りなさそうな帝釈天と弁財天に頭を下げた。



残された二人は、ハァッと深い溜め息を吐きながら苦笑いをした。



「……梵天のやつ、ホントいい性格してるぜ。絶妙なタイミングでシッダールタを攫っていきやがる」



ブッダに対する梵天の異常なまでの執着に気付いている帝釈天と弁財天。



それとなくブッダに気を付けるよう促したのだが、一度自分の懐に入れた者に対しては全く警戒心を持たないのがブッダだった。



「まったく、誰のために忠告してあげていると思っているんでしょうねシッダールタは。梵天に対して警戒心の欠片もないわ」



一種危険な空気をだだ漏れにしている梵天に対してほんの欠片も注意を払っていない。



ブッダはそんな梵天に対して、おかしいと感じたり違和感を覚えたりしていない様子で。



「「無防備にもほどがある」」



二人は揃ってつぶやくと深々と溜息を吐く。



梵天とブッダの間に何かとんでもないことが起こってしまいそうな予感に背筋がゾクゾクする。



帝釈天と弁財天の二人は梵天の無茶ぶりが想像出来てしまい、ブッダの無事をひたすらに願うのだった。

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