拍手お礼SS

□独占欲
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〜シッダールタが梵天に連れ去られた夜〜


●独占欲● 



「陛下、その方のお世話は私どもが……」



少女を腕に抱いたまま浴室へ向かう梵天に、侍女たちがあわてた様子で声を掛ける。



突然、王が連れて帰って来た意識を失ったままの少女。
どこの誰だか全く分からないが、王の様子からとても大事な方なのだろうと伺い知れた。



「時間が空いたから私がやろう。お前たちは上がった後の支度を頼む」



梵天の気紛れは今に始まった事ではない。



侍女が戸惑いがちながら命令に従い用意に走ったのを見届けると、梵天は今度こそ浴室へ入って行った。





シッダールタは身に着けている衣服を脱がせている時にも一切の反応を返さず昏々と眠り続ける。



梵天も同様に全裸になると、シッダールタを抱いたままいたまま浅く湯の張られた浴槽に入った。



自らの腕の中でぐっだりと力の抜けているシッダールタの体を左手で支え、淡い芳香を放つ石鹸を片手で器用に泡立たせた。



たとえ侍女であろうとシッダールタに触れさせたくないと思うなど狭量だな、と梵天は自嘲気味に笑う。



シッダールタの女性になった体は、少女から女に変わる時期の絶妙な色香を放っていた。



泡を纏った梵天の長い指がシッダールタの身体を滑ると、シッダールタの唇がうっすらと開き小さな吐息が漏れた。



意識を手放しているとはいえ物理的な刺激には身体が反応するのか、敏感な場所に刺激を加えればあえかな声を漏らす。



嬲る指の動きにシッダールタが一際大きく身を震わせると、梵天は苦しげな、それでいて愉悦に満ちた表情を浮かべたのだった――。



*******



「髪はしっかりと乾かしてやれよ」



湯から上がってシッダールタの長い髪を乾かしてやっていると、声と共に扉の向こうから現れたのは帝釈天だった。



「……何しに来た」



梵天はシッダールタを抱き上げるとそっと寝台へ寝かせた。
冷えないように足元まできっちりと薄布を掛けてやると、艶やかな青い髪を一筋手に取り口づけを落とす。



「分かってるクセに。姫が心配なのは重々承知ですが、我が君に山ほど溜まっているお仕事をして頂きたくお迎えに参上致しました」



ふざけた言葉を返しつつ、帝釈天は内心驚いていた。



梵天は自分のテリトリーを乱されるのを嫌う性質である為、部屋にも決まった人物のみしか入る事を許されてはいない。



女性を連れ込みもしない彼が、寝台に他人を乗せるなど初めての事だった。



未だ眠り続けるシッダールタを置いて、梵天は帝釈天と共に部屋を出た。



さっさと仕事を終わらせ、早く部屋に帰ってこようと梵天は足早に執務室へ向かうのだった。

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